17 不思議な感覚(懐かしい感じがする)

 不思議な感覚(懐かしい感じがする)


 天が天のお母さんとおばあちゃんと、大切な話をしている間、晴と幸は天の弟である、三つ森空と一緒に三つ森神社の境内の中にいた。三人はそこをゆっくりと歩いて、散歩していた。

 晴はとても静かな、鳥の鳴き声しか聞こえない、三つ森神社を見て、初めて訪れる場所なのに、そんな気がしない。

 どこかで、以前見たことがある風景のような気がした。


「俺、この場所、なんだか知っているような気がする」三つ森神社の風景を見て晴は言う。

「そんなわけないよ。だって、晴。三つ森神社は当然として、三つ森町にだって、三つ森駅を通過するくらいで、ほとんど来たことないでしょ?」幼馴染の幸が言う。

 幸はさっきからずっと年下の少年、(あるいは、美少年と言ったほうがいいのかもしれないけれど)空と楽しそうに会話をしながら、晴の隣を歩いていた。

(幸は実際に自分にも弟がいて、もともとお姉ちゃん気質なところがあるので、年下の子供たちには男女問わずに人気があった)


「まあ、それは確かにそうなんだけどさ……」晴は言う。


「それはきっと『縁』ですよ」

 にっこりと笑って、(なぜか幸と手をつないで歩いている)空が言った。

「『縁』?」晴が言う。

「はい。人と人をつなぐ『縁』です。この三つ森神社は縁結びの神様を祀っている日本でも最古の部類に入る、伝統のある神社なんですよ」

「縁結びの神様って、恋人とか、結婚とか、そういう恋とか愛の縁のこと?」幸が言う。

 幸はきっと、そんな神様を祀っている神社の当家の夫婦が(つまり天と空の両親のことだけど)離婚したりしたら、問題になるのではないか? と思っているのだと、晴は思った。(と、いうかそのことを晴も思っていた)


「そういうこともありますけど、もっと単純に『人と人をつなぐ縁』です」にっこりと笑って、空は言う。

 小柄な空は白い神服と水色の袴がよく似合っている。


「人と人とつなぐ縁」歩きながら、晴は言う。

「はい。神様とは本来、そういった力のことを指すのだと、おばあちゃんは言ってました。『人と人の間にいる目に見えない存在が神様なんだよ』って、おばあちゃんはそう幼いころの僕に教えてくれたんです」

 空は言う。


「いいこと言うね。さすが天と空のおばあちゃん」嬉しそうににっこりと笑って幸が言う。

「確かにな」なぜか晴も笑って言う。


「……さっきの話。もちろん、おばあちゃんはお姉ちゃんにもそう教えていたんですよ。三船さん」

 空が意味ありげな顔をして、そんなことを晴に言った。(晴は、なんとなく、そんな空に天の面影を重ねていた)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る