18 空と大地の間にあるもの
空と大地の間にあるもの
「縁が結ばれるってことはさ、……逆に縁が切れるってこともあるってことだよね」
幸が突然、そんなことを青色の空を見上げながら言った。
「……はい。そういうことも、あると思います。悲しいですけど」
小さな声で、(うつむいて)空は言う。
そんな空はちょっとだけ悲しそうな顔をしていた。(きっと、自分の離婚した父親と母親のことを考えていたのだと晴は思った)
「……あ、ごめんなさい! 空くん。そういう意味じゃないの。えっとね」慌てた声で幸は言う。(一瞬遅れて、自分の失言に幸は気がついたようだった)
「私が言っている縁って言うのはね、……」
と言って、幸はじっと晴を見た。
幸に見られて、晴は立ち止まり、同じように幸のことを見返した。
「……私の、個人的な縁のことだから、……あんまり気にしないでね。空くん」と言葉のはじめに晴を、言葉の終わりに空を見て幸はにっこりと笑ってそういった。
それから三人は三つ森神社の本殿の前に戻ってきた。
すると、そこには天がいた。
雨野天はいつものように、そこからじっと空を見ていた。
(はじめはわからなかったのだけど、最近、ずっと一緒にいるようになって、晴には、天の空を見上げる癖がわかるようになった)
三つ森神社の本殿の前で、白い石の大地の上から、青色の空をじっと真剣な顔で見つめている天は、どことなく自分(晴)の知っている『雨野天』ではなくて、晴の知らない『三つ森天』であるように、晴には思えた。
天は三つ森天のことを『もういなくなってしまった女の子』と言った。
天の中で、もう三つ森天の存在は消えてしまって、(つまり三つ森との縁が切れてしまったせいで)、天は、……その確かにこの場所にいたはずの、その女の子のことを、完全に自分の中で、消し去ってしまったのだろうか?
(でも、今、自分の目の前にいる女の子は、確かに自分の知らない、見たこともない、三つ森天であると、晴には思えた)
それは、……とても悲しいことだな、と晴は思った。
縁が切れる、ということは、とても悲しいことなのだ。
なぜなら、それは人と人との間を結んでいた紐が切れてしまって、その人たちの永遠の別れのことを、意味しているのだと思うから……。
「あ、おかえり」
空から大地の上に戻ってきた天は、晴のよく知っている雨野天の顔で、にっこりと笑って、晴たち三人にそう言った。
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