15 電車に乗って
電車に乗って
電車の中は日曜日だというのに、結構、空いていた。
三人は電車の席にドアの横の席から順に、晴、幸、天、の順番で座った。(見事に幸は晴と天の間に割って入って座った。……わざとではないけど、なんとなくそうなった)
三人は電車がやってくるまでは、結構普通に会話をしていた。
天と幸も、すごく仲が良くて、まるでずっと以前からの親友同士のように、楽しそうに会話をしていた。(主に晴の昔話とかだったけど)
でも、電車がきて、その空いている電車の車内の席に座ると、なんだか急に三人とも静かになった。
がたんごとん。
と言う電車の走る音だけが、手すりに膝を当てて、頬杖をついている晴の耳に聞こえていた。
三人は三人とも、その電車の走る音を聞きながら、流れる外の花森町の風景を見て、ずっとなにかを考えているようだった。
天は、きっとこれから自分の実家で、自分の母親とおばあちゃん(天が二人と大喧嘩をしたのだと笑いながら晴に話してくれた)とどんな話をしようかと、そんなことを考えているのだろうと、晴は思った。
隣に座っている幸は、……なにを考えているのかよくわからなかったけど、幸はすごく真剣な顔で、なにかをじっと考え込んでいた。
そして、晴は、……実はあんまり、なにも考えていはいなかった。
これからは天自身の問題だ。
天の心の支えになってあげることはできるけど、(もとより晴はそのつもりだった)問題を解決するのは、天自身の個人的な力であり、他の人間が、その力を貸すことのできない、問題だった。
まあ、俺の役目は終わったってことだ。
あとは、天の友達として、天を支えていけばいい。それだけのことなんだ。
そんなことを晴は思っていた。
「次は三つ森駅。三つ森駅」
緑色の電車の車内に、そんなアナウンスが流れた。
「次の駅だね。降りる準備をしようか?」二人を見て天が言った。
「うん」
「わかった」
幸と晴は、にっこりと笑って、天にそう言った。
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