13 お前のことが好きだからだよ。

 お前のことが好きだからだよ。


「三船くん。君、やっぱりすごくいいやつだね」

 天は言う。

「……そんなことないよ」晴は言う。


「ふふ。ふふ」

 天は言う。

 天はなんだかおかしくてたまらないって顔をしていた。それから天はもう我慢仕切れないって顔をして、大きな声を出して笑った。

 それは、今まで一度も見たことがない、(雨の商店街でも、花森高校の教室の中でも)初めて見る、天の、本当に無邪気な、……(きっと、君の本当の)笑顔だった。


 晴はそんな天の笑顔に、つい、見とれてしまった。


「ごめんなさい。笑うつもりなんてなかったの。でも……」

「でも? なに?」晴は言う。

「三船くんが、なんだかすごく優しいから、つい、おかしくて、笑いたくなっちゃって」そんなことを涙目の天は言う。

「俺が優しいと、おかしいのかよ?」晴は言う。


「うん。変だよ。すっごく、変だよ」天は言う。

「どのあたりが?」晴は言う。(実際に晴はなんで天が笑っているのか、よく理由がわからなかった)


「だって、私たちはまだ会ったばかりなんだよ? 会話だって、ほとんどしてないし、お互いのことも全然知らない。なのに、三船くんは私のために、どうしてこんなに一生懸命になってくれるの? どうしてこんなに私のために必死になってくれるの?」天は言う。

 それは天の本当に素朴な疑問だった。


「そんなの簡単だよ」

「なに?」

「俺は、天。お前のことが好きだからだよ」天の顔を正面から見て、晴は言った。

(いつか告白しようと思ってはいたのだけど、こんなに早く、しかもこんなタイミングで自分が天に恋の告白をすることになるとは、晴はちっとも予想していなかった)


 晴の突然の恋の告白を聞いて、天の顔は真っ赤になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る