タイトル通りの大金を手に入れた夫婦。ここまでなら、ただ豪遊したり慈善活動で感謝されたり誰でも想像できるような展開だったでしょう。
しかし、本作はその後に“ただし10年以内に全てを使い切れ”という条件がつきます。
この条件が本作の面白さの核です。
平凡な一般人である夫婦は、自分程度の贅沢では使いきれないと思い、協力者を向かい入れるのですが…
思いもよらぬ方法で5000兆円を消そうとする協力者に、夫婦も読者も空いた口が塞がらないでしょう。
結局お金をたくさん持っていること、それがイコールで幸せに繋がるのか?
主人公の行く末をぜひその目で確かめてください。
この物語を読んだあと神様に「それでも5000兆円欲しいか?」と尋ねられたらどう答えられるだろうか。
5000万円でもなかなか実感が沸かないのにその1億倍もの金額なんて、宇宙の広さの話をしているくらいに実感がない。この物語はその宇宙の広さを、例えば新幹線ならこのくらい、光の速さならこのくらいかかると現実的な物差しに落とし込んで説明しながら、最後は物理世界をハッキングするかのようなワープ航法で、読者を一気にファンタジーな世界に連れて行ってしまう。
そう、5000兆円とはもはやファンタジー、妖精やモンスターが跋扈するような世界の話なのである。この物語は、そのような非現実世界と現実世界との狭間で主人公たちが散々苦悶し、そして最後に一筋の光、希望を見出し現実世界への生還を無事に果たす、壮大な物語なのだ。
あなたなら神様に「それでも5000兆円欲しいか?」と尋ねられたら何と答えるのか。私は勿論、イエスである。