第19話

 先程のプリリコさんも何言ってるか分からないなーなんて思いながら話を聞いていたのに、これまた訳の分からないことを聞かされた。

「どういうことですか…?」

「さっきの剣、あれは王剣だろう。」

「王剣…?」

 聞いたこともない言葉だ。邪剣って言葉も聞いたことがなかったし、この世界にはいろいろな種類の剣が存在しているのだろうか。

「知らずに持っていたのか?」

「うん…?はい…。」

「そうか…。産まれた子が女の子だったからと言って川に捨てたという逸話は本当だったんだな。」

 確かにおばあちゃんには私がどこで産まれたのか聞いても川で拾ったと、はぐらかされてばっかりだった気がする。でもまさかそれが本当だったなんて。

「王剣は持ち主の魔法の力を剣の魔法として具現化する。まさか、父上と同じ技をまた見ることになるとは思わなかった。」

「あ、あの…。なら私はどうすれば…。」

 モカは頭の中を整理しながらジンに質問する。

「俺に付いてきてくれ。あのクソアニキを止める。」

 今まで笑っていたジンが笑うのを止めスッと遠くを見るような目をする。

「第二と第三がこっちにいるとしたら、兵はこちら側に付くだろう。内乱になるかもしれない。だが、クソアニキを説得しないと意味もなく民が死ぬことになる。」

「分かりました。ジン王子。私はあなたに着いて行くことにします。」

 私はなんとなくだが、私の生まれた意味、そしてやるべきことを見つけた気がした。

「嬢ちゃんにそう呼ばれると何か変な感じだな。お兄ちゃんとかでいいぞ?」

「あーそれはいやです。それに私にもモカって名前があるので嬢ちゃんはやめてください。」

 苦笑いしながらもジンの言葉に返答する。

「ああ、そうか分かった。モカ。よろしく頼む。」

「はい、ジンさん。」

 ジンは私の方からみんなの方に向き直し意気込みを入れる。

「出発は二日後の朝にしよう。みんな疲れているだろうしな。その時にまたここに集合しよう。」

 おおおと少人数が声をあげる。プリリコを含め、本当に少しの人数だ。もしかしてジンの連れている兵達ってものすごく少ないんじゃ…。

 ここから二日間の休息のはずが、いろいろあった。

 まず、イーレイの町の復興のお手伝い。

 人が生きていくには衣食住が必要になる。服などの着れるものは燃えている家などが少なかったためか心配はいらなかった。

 次に食べ物。海や湖は綺麗なままだし、山には食べ物は豊富だし、ここも気にするところではなかった。

 最後に住むところ。町の被害は甚大だった。みんなで村人の寝る場所の確保を最優先に行った。そうは言っても私ができることは応援することぐらいだったのだが。

 衣食住が終わった後は魔族に攻められた時のための対処。

 こちらは残った村人に弓の扱い方を教え、火矢で対抗してもらうことにするようだ。しっかりしているというかなんというか、ジンは私達が戦っている間、敵の戦艦を乗っ取っていたようで、その戦艦も対抗するときに役立つだろう。

 最後に今回の死者達のお墓だ。

 なんとなくだが、私は私が殺したトカゲ男やバルキリオスを埋めてあげて、木の棒を立てておいた。敵だとしても敬意を払いたかったのだろうか。

 マサコのおじさんのマサトシは戦艦から降りてきたトカゲ男達との戦いで命を落としていた。

「私の血筋は強がりな人が多いんです。きっと、おじさまも…。」

 その事実を知った時、マサコはそのそう言いながら涙を流していた。おじさんのお墓はおじさんが好きだったという海が見えるようにと崖の上に作った。夕日を片目にマサコはお墓の前で涙を流していた。私も会ったのはほんの少しであったが、私が付いて行っていれば何か変わったかもと考えてしまうと自然と目頭が熱くなっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る