第18話
「見せてもらったぞ。嬢ちゃん達。」
どこからともなく声が聞こえてきた。これはジンの声だ。また、気配を感じなかった。
「ジンさん遅いですわよ!いったいどうなることかと…。」
「すまねえな、ロン毛の嬢ちゃん。俺が帰ってくるのがもう少し早かったら…。」
そう言ってジンは辺りを見渡す。歓声は上がってはいたが、人の数が少ないなと感じると歯を食いしばった。
「ジン王子!よくご無事で!」
何人かがジンの元に駆け寄る。
「ああ、だがお前ら救護隊をここに残していったのは間違いだったな。すまない。俺は指揮官として失格だ。」
ジン王子?何かの聞き間違いだろうか。王子って単独で敵陣に乗り込んだりするもんだっけ?そんなことを考えていると、ジンに手招きされる。
「俺の仲間や民を守ってくれてありがとう。嬢ちゃんがいなかったら今頃どうなっていたか…。」
「いや、私は当然のことをしただけで…。それにこのペンダントが助けてくれたんです。」
私は慌てて、ペンダントを手のひらに乗せて見せる。
「ああ、見てたぜ。その話は後にして、お前らが連れていた爺さんは?」
「ここですわ。」
マサコがボルホイを抱えながらこちらにやってくる。
「すまねえこの爺さんは恩人の恩人だ。治療してやってくれないか?」
ジンが救護隊と呼ばれた人たちがボルホイの元に集まる。
「ジン様、王家のお方と同じ名前の方だとは思っていましたが、まさか本物とは…。数々のご無礼をお許しください。」
ボルホイが深々とお辞儀をする。マサコもボルホイを見て同じようにお辞儀する。
「救護隊、隊長のプリリコです。今からあなたの施術を開始します。」
プリリコは隊長と言う割には小柄で私達より年下に見えた。
プリリコはボルホイを横にして怪我の具合を見始める。
「この止血は…?」
「ああ、俺がやった。」
プリリコの問いにジンが返事をする。
「また、腕を上げられましたね。」
「ああ、なんでもできるようにならなきゃ、お前らの助けにもなれないからな。」
照れくさそうにジンはポリポリと頭を掻く。
「では治療水を染み込ませます。」
そう言ってプリリコは治療水と呼ばれる水をボルホイの傷口付近に数滴垂らし、魔法を詠唱する。
「コンプレッション。」
この魔法はジンがボルホイを止血するときに使った魔法だったはずだ。しかし、ボルホイの傷口からはシュウウと音を立てながら白い煙を上げている。
「ぐぬぬぬ…。」
ボルホイは痛みに耐えながら声を我慢しているようだった。
「何をしていますの…?!」
「まぁ、見てて。」
マサコがプリリコに声を荒げるが、すぐにプリリコに止められる。
なんかどこかで見た光景だなと思うと、プリリコが説明を始めた。
「この治療水には人が生きようと脳から分泌される物質を阻害する効果があるの。」
「それだと、ボルホイは治らないのでは…?」
「違う。この治療法は元に戻す治療法。人が生きようと分泌される物質をそのままにしていたら、生きることはできるけど、指は生えてこない。」
「では指が生えてくると…?」
「そういうこと。」
ほー…と皆が関心しているとプリリコは施術を終えていた。
「ふー。」
「よかったですわね!ボルホイ!」
マサコはボルホイがまた剣を振るうことができると思うと自然と涙が出てきていた。
「足の治療と指の治療、合わせて三ヶ月程度かな。私が預からせてもらうね。」
「そういうことなら仕方ありませんわね…。」
今の説明を聞いて断ることはできないと返事したマサコだが、しばらくボルホイを預けるということに肩を落とす。
「そうしょげんなって!爺さんが元気になったらまた一緒にいられるはずだからよ。」
「そうですわね…。ありがとうございます。プリリコ様。ジン様。」
マサコは再び深々と頭を下げた。
「ところでお前ら二人はこれからどうするんだ?」
「そうですわね…。この土地の復興のお手伝いをしようと考えています。」
「なら、私もそうするよ。」
私がマサコに続けて返事した時だった。
「いや、悪いがお前には俺と一緒に来てもらう。」
ジンが私の腕をつかんだ。
「え、なんでですか…?」
「単刀直入に言うとお前は第三王位の人間だ。まさか本当に生きて存在しているとはな…。」
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