第17話
「これが俺の邪剣かあ…。魔王様がくださった力…。ようやく目覚めてくれたぜ…。」
バルキリオスは自身の左腕だったものうっとりと見つめる。その左腕だったものは太陽光に反射していた白いウロコのようなものは無くなっており、漆黒に染まっており、形も腕だったとは思えないほど禍々しい剣の形に変貌していた。
「モカさん!」
マサコは咄嗟にモカを心配するように声を発する。
「うるせえんだよ!ゴミ虫どもが!」
バルキリオスが邪剣と呼んだ剣をマサコ目掛けて振る。充分に距離があると思われたその距離すらも詰めるほどの勢いで剣が伸びた。
咄嗟にボルホイがマサコの身体を押し倒し、攻撃を免れる。
「俺は今、最高の気分なんだ。いろんなものを喰ってきた。同じ亜人族の奴ら、草や岩、そしてトカゲ族の仲間たち。だが人間を喰った時の高揚感が一番…。強くなれる感じがしたんだ。やっと、やっとここまで登り詰めた。」
バルキリオスの身体も黒く染まり始めていた。
「ケホッケホッ。」
形勢はまた逆転しちゃったな…あんな化け物、私じゃ倒せないよ…。
その頃、瓦礫に身を潜めていたモカは悩んでいた。
光のバリアのお蔭で傷一つついてはいないが、あのどんどん強くなる化け物を前にして身震いしていた。
何か策を策を練らないと…。
「その力ならお前は既に持っておる。」
どこからか、声が聞こえたような気がした。その声は温かくどこかで聞いたような感じがある声だった。
そんな力、持ってない。私には魔法の才能もないもの。
「そんなことはない。よく考えてみろ。」
この声の正体にだんだんとモカは気づいてきていた。夢の中の大きな人。夢の中で話したことはないが、ハッキリとそう感じた。
「お前には光がある。」
そうだ、私には光がある。この私を守ってくれるバリア。あのワニ男が腕を武器にしたように私にも何かこのバリアを武器にする方法はないか。
この光を一点に集めて…。そう念じると、周りの光が収縮するようにペンダントに集まっていく。。
もっと鋭く、敵を弾くのではなく、貫けるような…。
すると、ペンダントは首に繋がれていた紐は自然に外れ、宙に浮かびあがり、そして剣の持ち手のように大きくなった。
これは剣…だ。私は直感的に察した。
ペンダントは私に答えるように剣になったのだろう。
「これで戦える。」
私が剣の持ち手を持つと、光の剣が伸びた。
私は剣を手にすると、両手で剣を真っすぐ持ち、バルキリオス目掛けて、めいいっぱい跳んだ。
「はあああああああああ!」
剣なんて初めて握るからどう握ればいいかなんて分からないけど、頭の上に構えた剣を思いっきりバルキリオスめがけて振り下ろした。
「またお前かっ!」
咄嗟にバルキリオスも邪剣を構え、剣と剣がぶつかる。あたりに風とビリビリとした振動が伝わる。
「たあああああああああああああ!!!!!」
モカは剣に体重を乗せたまま叫ぶ。バルキリオスの邪剣にピキッとヒビが入ったと思うと、邪剣が割れた。
「まさか…なにが起こって…。」
バルキリオスが言葉を発し終わる前に私はバルキリオスを頭から縦に切り裂いた。
赤黒い煙をあげながら消滅していく邪剣。バルキリオスの頭からは血を吹き出し、身体はその場にばたりと倒れた。
「はあ…はあ…。」
息切れしながらもバルキリオスを倒したことは理解した。
ペンダントから発せられる光も小さくなる。
「ありがとう。」
剣になってくれたこと、バリアを張ってくれたことに思わず私はペンダントに呟いていた。
ペンダントは何事もなかったかのようにいつもの光のない状態に戻っていた。
「モカさああああ!!」
戦いが終わったのだろうと、マサコが抱きついてくる。
「大げさだなあ。」
私はマサコの頭を撫でながら辺りを見渡す。
辺りは生き残った者たちが歓声をあげていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます