台湾人に「中国人の友達がいるから」と言ってしまった話
ラノベみたいな長いタイトルに憧れているわけではない。
ただ、要約するとそういうことである。
私は今年の10月、台湾で開催される学会に参加するため、チャイナエアラインを利用して東京から台北に飛んだ。
エコノミークラスでありながら座席はかなりゆったりとしていて快適である。毛布や枕も無料で提供してくれるし、CAさんの対応も素晴らしい。日系フルサービスにまったく劣らない快適なフライトだった。
私は通路側に座っており、機内食をどれにするか(たしかチキンカレーと何か)窓側の座席から順に聞いていく。窓側2人が台湾人の若い女性だったので、CAさんが中国語(国語)で声をかけていた。この流れで私も中国語で受け答えをしたのだが、速攻で「日本人の方ですね。失礼いたしました。」と素敵な笑顔で言われてしまった。
自分の発音に絶望しつつも、とにかく飛行機は台北桃園空港に無事着陸した。
この時私は通路側だったので、棚から自分の荷物を降ろすことができたのだが、隣の台湾人の女性二人のものとおぼしき荷物が残されていた。
まあ、日本語訛りで不自然な中国語とはいえ意思疎通くらいできるので、「这是您的吗?(これはあなたのですか?)」女性二人に声を掛けた。
座席のディスプレイも日本語で操作していたし、CAさんとも基本日本語でしゃべっていたので、間違いなく日本人だと思われていたのだろう。
二人ともちょっとびっくりした顔をしたが、すぐに笑顔になってそうだと答えた。
行列ができていてすぐには飛行機から降りられなさそうなので、座席でしばらく会話が弾むことになった。
すると「なんで国語(中国語)ができるの?」と聞かれたので、私はいつもの決まり文句で「中国人の友達が多いので!」と答えた。
すると向こうは少し微妙な表情になって「ああ、なるほど.......」と言ったっきり、話題がすぐに変わってしまった。
ここでやっと私は、さっきの答え方はあまりベストなものではなかったことに気がついた。
現在、多くの若い台湾人にとって「中国人」とは中華人民共和国を意味する。もちろん中華民国政府を「中国の正統政府」と認識している人もいるだろうが、「台湾アイデンティティ」の広がりが著しい現在、自分を中国人だと自己認識している台湾人はかなり少数だろう。
おそらくこの女性も「中国人」ではなく「台湾人」だと自己認識していたからこそ、微妙な反応だったのだ。
「中国語」を話す「外国人」の友達がいるのかーという程度ですめばまだいいのだが、中国人アイデンティティを持たない台湾人に対して「おまえも中国人だろう」と決めつけるようなニュアンスになっていたのなら最悪である。
しかし、とにかく話題を切り替えて話し続けたので、とりあえずなごやかな感じで機を降りることができた。
別れ際には「お兄さん、バイバイ!」といってもらえたので、まあその時はあまり悪い気がしなかった。
こうして無事(?)台湾における初めての中国語トークを終えたのだが、学会を終え帰国しようとした空港でも、再び中国語をしゃべる機会に直面することになる。
その時もまた「どうして中国語ができるの?」聞かれることになるのだが―———。
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