先輩と後輩


彼ら、彼女らには基本的に「先輩と後輩」という概念がない。


いや、あるにはあるのだが、日本式の上下関係とは違うものである。


「長幼の序」というのはそもそも中国発の儒教の教えであり、日本特有の厳しい年齢による上下関係はこれの影響と説明されることが多い。

しかし、当の中国にはあまり厳しい上下関係はないようである。


いや、この説明の仕方も良くない。中華圏においては地下鉄で老人に席を譲るというのは日常茶飯事だし、その点の徹底具合は日本の比ではない。


ただ単に、日本式の「長幼の序」は儒教が「異常な形態」に進化したシロモノなのかもしれない。



いずれにせよ、中国人だらけのバイト先では年齢のことなど気にしたことはない。ただ、タメの同僚として接するのみである。


私は塾では講師として中国人たちを教えているのだが、彼ら彼女らは先生に対しても実にフレンドリーである。


中国人どうしなら、先生と学生の間柄でも「Hi !」と挨拶することもあるし(もちろん人間関係によるが)、別れ際も手を振って「Bye Bye」だ。


当然普段はお辞儀などしないのだが、中国人の先生たちに「バイバイ~」とやっているのに、私を見掛けた途端真顔で首をひょこっと下げて「さようなら」と言ったりするので、なんだか親しみがないような気になってしまう。


多少日本の習慣を知っている中国人にとっては、日本人への対応はそれくらい「気をつけなければいけないこと」のひとつなのだろう。


とはいえ、お互いに慣れてくるとすぐに中国式に変わるのだが。

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