11/23温かい飲み物「生姜入りはちみつカリン茶」

 風邪をひいてしまった。元々風邪をひきやすい体質だったとはいえ、仕事に影響が出てしまった。きっと柑奈は体調管理ができないなんてプロ失格だと思っているだろう。わたしだってひきたくてひいているわけではないのに。

 見舞いに来てくれた柑奈は先程から台所で何かをしている。事務所が用意したマンションは台所が狭くて、特に何かできそうな感じではないのに。それに柑奈の料理の腕を考えると少し不安だ。

「蒼」

 扉が開いて、柑奈が手にマグカップを持って入ってきた。マグカップからは湯気が立っている。

「甘い匂いがする」

「生姜入りはちみつカリン茶。喉にいいらしいから」

「ありがと」

 体を起こしてマグカップを受け取る。すぐには飲めそうにないくらい熱かったので、息を吹きかけて冷ます。

「ごめんね、柑奈」

「何が?」

「わたしのせいで、レコーディング延期になっちゃったから……」

「そんなこと、蒼は気にする必要ないよ」

 柑奈はわたしが歌さえ歌えればいい状態にいつも整えてくれている。計画を立てるのも、日程を調整するのも、誰かに頭を下げるのも柑奈が全部引き受けている。だからわたしはいい歌を歌わなければならないのに、今はそれができない。これから続けられるかどうかもわからないのだ。

「今はちゃんと休んで、早く治して」

「……うん」

 じゃあもし治らなかったら、一生歌えなくなったら柑奈はどうするの?

 聞く代わりにカリン茶を一口飲む。はちみつの甘さのあとに、柑橘の苦味が舌に残った。

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