11/22冬将軍「赤と青のマフラー」
「うー……寒い……」
「今日はこの冬一番の冷え込みだっていうのに、そんなに薄着をするからよ」
そう言う詩音は厚着をしすぎて雪だるまのようになっている。少しでも暖まろうとその場で足踏みを始めたるりに、詩音は鞄の中からホッカイロを取り出して渡した。
「ありがとう!」
「首元も寒そうね。声に良くないわよ」
詩音はと言えば、マフラーをぐるぐると巻いている。毛糸のマフラーは編み目がまばらで、それが手作りであることを示していた。
「ほら、これ使って」
用意が良すぎる詩音が鞄から取り出したのは、詩音が巻いているものと色違いのマフラーだった。
「これ、詩音が編んだの?」
「そうよ。これを作るために練習で編んだの」
「こっちの方が編み目綺麗じゃない?」
「……目の錯覚よ」
るりは苦笑しながらマフラーを巻いた。首元に温もりが広がる。結び目に手をやり笑みを溢すと、詩音が不満そうな声を上げた。
「何よ」
「なんでもないよ。ほら、早く行こ!」
「そんなに急いだら転ぶわよ」
歩道には雪が積もり、それが踏み固められて滑りやすくなっている。雪のせいで並んで歩くのは難しい。けれど背後に感じる詩音の気配だけで、冬の寒さも吹き飛ぶような気がしていた。
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