11/14ポケット「小さな宝石」

「お宝だよ!」

 妹が上着の小さなポケットをパンパンにして帰ってきた。今日は友達と一緒に、神明宮の隣にある大きな雑木林で遊んできたはずだけど、一体何があったのだろう。ただの雑木林だからドングリの一つも落ちていない場所のはずだけれど。

「ほら、これ綺麗でしょ!」

「あーこれは……」

 半透明の蛍光色の小さな球体。いわゆるBB弾。白とオレンジ色のものが多い中で、光にかざすと透けるそれは、確かにお宝なのかもしれなかった。

 子供の頃は、それがなんに使われたのかも知らずによく集めていた。ポケットに入れて帰ってきて、綺麗に洗って瓶に詰めた。今ではそのBB弾の用途を知ってしまったし、何ならたまに使っている。俺はちゃんと使ってもいい場所。選んでいる、ということだけは言っておきたい。あの雑木林は、昔からエアガンの類は使用禁止なのだ。

 最近はあそこで使う人は減っていたはずなのだが、新入りがいるのだろうか。だとしたら、宝探しのときはハンターに気をつけるように言っておかなければならない。

 とはいえ何よりも今はこのご満悦な妹の方が大事だ。俺は鑑定士の片眼鏡を指で作った。

「これはかなりのお宝だなぁ。かなり貴重なものだから、綺麗に洗って取っておかないとなぁ」

「うん!」

 きっと妹の中では、このBB弾に色々な設定が付与されているのだろう。魔法使いが使う杖に付ける宝玉、だとかそういう感じの。

 俺だって未だに立派な枝を見れば伝説の剣だと思ってしまう。夢とガラクタと土でポケットをいっぱいにしてしまう。母親は怒るけど、でも楽しいんだよな。

「三つあるから、一つお兄ちゃんにもあげるね!」

 大事にしてね、と妹は明るい声で言う。本当は同じ色のものが二百個ほど部屋にあるけれど、それは内緒だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る