11/7朗読「水曜日、五時間目」
先生に指名されて、蒼が古典の教科書を読み始める。時折つっかえることもあるが、おおむね滑らかに、平安時代の恋模様を読み上げていた。
蒼の声は、喋る声と歌声に大きな開きがある。私が求めていたのはその歌声だが、喋る声も悪くない。教科書に目を落としているフリをしながらその声に耳を傾ける。
少しざらりとした声なのに残響は驚くほど滑らかで、可愛らしい声なのに深い響きを持っている。ずっとこの声を聞いていられたらいいのに。
ふと思い立って、机の中に入れていたICレコーダーに手を伸ばした。この機械は蒼の声の全てを閉じ込めることはできないけれど、いつでも聞けるようにすることはできる。録っていたと言ったら、きっと蒼は嫌がるだろうけれど。
読み終わった蒼が席につく。また退屈な授業が始まる。蒼が読み上げた文が名詞や動詞や助動詞なんかに分解されていった。
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