11/5トパーズ「トパーズの指輪」
「トパーズなんて」
彼からもらった指輪を見た瞬間、母はそう言った。彼女は何でも一番のものが好きだ。布なら絹、花なら薔薇、そして宝石ならダイアモンドだ。
「誕生石だもん」
彼は言っていた。トパーズという名前はギリシャ語のトパジオスから来ていて、その意味は「探し求める」。トパーズは何かを探し求める人の道を照らす石なんだそうだ。実際のところはわからない。私は鉱物が好きだけれど、石に何か力があるとは思えない。でも彼が私のことを考えながら選んでくれたことがなによりも大きな価値を持つのだ。
「でも、どうせならダイアモンドとかにすればいいのに」
母は一番しか許さない。それ以外のものは、ルビーやサファイアですら劣っていると思っている。私にとっては、宝石店に鎮座するダイアモンドより、彼が選んだトパーズの方が価値があるのに、母にはそれがわからない。
でも別にもうどうだっていい。私は窓から差し込む光に指輪をかざした。母が何を言ったって、彼が私を想っているのは揺るがない。だからもういちいち傷つくこともない。むしろこの幸せを知らない母を哀れに思う。
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