第60話 【おまけ】香織りべんじ
「最近よく悠人さんのベッドで寝ちゃってるけど迷惑に思われてないといいなぁ。でも昨日は起きたら悠人さんが優しい表情で、なんだかこっちまで穏やかな気持ちになっちゃったんだよー。それでね、良いことがあったって話してるときの悠人さんから目が話せなくて……ってなに言ってるんだろう! チビにはわかんないよね? う〜ん、チビはふわふわでかわいいなぁ。本当に狼なのかな? 狼ってもっとゴワゴワしてるイメージだけど」
チビに近況報告をしていた自分がなんだかちょっと変な人に思えて途端に恥ずかしくなる。でもチビはこういう時いつもちゃんと聞いてくれる。何を言ってるのかわかってないと思うけどね。
明日に備えて悠人さんは服とかハンマーとかを強化してくれた。そしたらすごいの。引っ張ってものびのび〜ってならないのに、着心地はそのままなの。悠里じゃないけど、悠人さんってすごく便利! 本人に言ったら悲しい顔をされちゃいそうだから絶対に言わないでおこう。
「わふわふ」
「ん? どうしたのチビ? 一緒にお風呂はいる?」
「わふん!」
「あっ、ちょっとひっぱらないで〜」
チビに連れられて来たのは今悠人さんが入っているであろう露天風呂。昨日はみんなとここに入った。職人の仕事だねって四人でこっそり褒めてた。その露天風呂に連れてこられたということは……チビはこっちに入りたいのかな? でもでも今は悠人さんが……ええいままよ! 一度はお背中を流したことだってあるんだ! がんばれ私!
カラカラカラ‥‥‥
「し、失礼しま〜す……あっ、ちょっとチビ押さないで」
あれ? 悠人さん寝てる? 今のうちにこっそり入っちゃおう。け、決してやましい気持ちじゃなくて……
ほら、お風呂で寝ちゃうと危険って言うじゃない? そういうこと!
「ダンジョンなのに月見風呂とは、贅沢だなぁ〜」
「そうですね〜(ひゃー! 起きてたのかな?!)」
「頑張って作った甲斐があったってもんだ〜」
「おつかれさまです(本当におつかれさまです)」
「ま、エアリスと能力頼みなんだけどねーあっははー。……え?えぇえぇぇえ!?」
悠人さんって、天然? エアリスと話してるつもりだったのかな?
何気ない会話? できてると思う、たぶん。よぉし、この間のリベンジ!
「あっ、髪の毛まだ洗ってないですよね?」
「う、うん。まだ」
「じゃあ洗いますね。お湯に浸かったままでも洗えそうですね」
「うん。お湯に浸かったままチビを洗えるように作ったんだ」
悠人さんは豪快に風呂のお湯をかぶり髪を濡らす。その濡れた髪に指を滑り込ませシャンプーを泡立てていく。
今日こそはちゃんと美容院でお流ししてもらう時みたいにするんだ!
「痒いところはございませんか〜?」
「んーと、あ、そのへんもうちょい下……」
「はぁい」(よしよし! 前回よりも上手にできてる〜!)
「あ〜」
「気持ちいいですか〜?」(悠人さんったら、おじさんみたい(笑))
「控えめに言って……最高ですぅぅ」
「ふふっ。……んしょっと、この方が洗いやすいですね」
ずっと首を後ろに反らしている悠人さん、首痛くならないのかな。明日に差し支えるといけないし、丁度良い高さだから膝に載せてあげた方が良いかな? でもお風呂で膝枕なんて、はしたないわよ香織! でもでも……悪くないかも。悠人さんが目を開けられないのを良い事に眺めていられる……。
時々顔に胸が当たっちゃってるけど、目を閉じてるしさっきも寝てたみたいだし、たぶんうとうとしてるんだよね。ふふふ、この指テクで悠人さんの頭皮をしっかり掴むのよ!
「はい、終わりましたよ〜」(ふぅ。良い仕事した!)
「あ、ありがとう。すっっごい気持ちよかったよ」
ご満足いただけたようで何よりです! リベンジ成功! かな?
でも……なんだかすごく大胆なことしてたような気がしてきた! ど、どうしよう、はしたない娘だって思われてないかな!? だ、大丈夫だよね! と、とりあえず温まったしもう出よう!
「じゃあお先に失礼しますね!」
ザパァと立ち上がり脱衣所へ。そこで気付いた……
「あっ……まだ髪洗ってない……あっちで洗お……」
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