第26話 17日目
きっかけはいつも不意にやってくる。
それから俺はこんこんと眠り続けた。
死者のカタコウム。
感情も凍り、思考も滞って、ただただ溟い。
カラダの感覚がある。
心臓から血が巡り、頭のてっぺん、手足の爪先の隅々まで行き渡る。
肉は透き通り、輝きを放っている。
浮遊しているような、ここにあらずではあるが、ある、という認識と感覚はある。
魂だけなのか。
その言葉では片付けたくはなかった。
名付けざる先ぶれが、すぐそこまでやってきていた。
北の厳しい嶺でこんこんと習業されている秘密宗教に、成りならざる、というのがあるらしいが。
案外俺は信心深かったのだろうか。
人にはいつも宗教がついて回る。
良かれ悪しかれ、大なり小なり。
それを偉大な精神性と呼びもするし、古臭い考えともする。
神秘。
それが厄介なのだ。
わからないが大きいもの、高いものに対する念。
ソム。
うーん、考え過ぎた。
戻るとしよう。
きっと、待ちわびているはずだ。
そして形容しざる夜は開けた。
メルスはジェーマに散々泣きつかれた。
もー、だー、いくはだめtk
ちゃんとした言葉にならないほど相手をおもってくれていたのだ。
「ごめんなさい」
しっとり反省するメルス。
ジェーマは悪感情を地団駄を踏んでいなし、まだぐずつく体で
しっかりマウントで抱きついてきた。
「……いい!」
まるで家族みたいだ。
誰もが寂しいのかなあ。
感情が色や匂いで見えるようだ。
というのは、記憶や認識が揺さぶられているせいで、どこかにある引き出しかまとまりかは知らんけど、なんらの改変が起きているのかもしれない。俺が思っている俺は、いったいどういうつくりでここにある?
ダメだ、暴れ出した!
石だ。
心に石が迫ってくる。
どんどんどんどん迫り迫って、ぶつかり、重なった。
マズい。
……メルス。
メルスは弾かれるように異変に気がついた。
やさしくジェーマを離すと、反射的に腰袋の小石を取り出す。
小石だ。
ほんとにただのこいしになってしまった。
メルス、目からぶあっと涙が溢れる。
「ソム!!!」
17日目続く。
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