第18話 13日目?
こうやって空を飛ぶのは何回目だろうか。
いや、今は落ちているのか。
どっちも変わらん。
メルスは穴に向かって水平に、両手両足を広げて風を受けている体勢だ。
本能だろうが、理にかなっている。
「わああああああああああああああああああおおおおう」
大声で楽しんでいるようだ。
あっ、郷だ。
ひとびとがのんびり畠を耕している。
あっちには滝が流れ。
下方には木々が茂り複雑な構造をなしている。
何頭もの猿が居心地よくじゃれあっていた。
そこらには奇鳥が優雅につがいとなって絨毯のような浮島をなし。
壁にはりついた球形の巨大な胞子がメロディアスな放出を繰り返していた。
朝なのか夜なのか判然とはせず。
層を成した薄い空気の層が布の重ねのようにやわらげだ。
大小取り混ぜて新発見のオンパレード。
穴世界?
内壁は段をなしてねじれ、窄まり、狭まっている。
雲の壁が層をつくり、入り込むと濃霧となった。
ひゅうおおおおおぅ、という風を切る音がしばらく続く。
メルスは押し黙っている。
あれやこれやの驚きの異景に素直に驚いているのだ。
しごくいつものメルスさんだ。
「あれ。ソム」
穴の底を指差し。
「そこがぬけてる」
そこの果ての先は。
世界を通り抜けた。
夥しい野鳥が往き交い鳴いている。
太陽が近い。夕暮れだ。
メルスと俺はといえば。
大樹の枝に引っかかっていた。
葉っぱまみれだ。
メルスはキョロキョロ辺りを見回し。
ゆっくりと、気をつけて地面に下りる。
「…」
?
「ここが…ソムのいたところ?」
「んあ…ああ。千代八千代の世界、正真正銘のムンディさ。まずはここがどこか、だが」
メルスが深呼吸する。
すー。はー。すー。はー。
「…うん。ソムっぽい」
なんだか気恥ずかしい。
地面や石をはじめてみるかのようにさわさわしている。
見守りつつ。
煙がいく筋ものんびり立ち上っているのを見つけた。
ひとしきりメルスが満足するのを待った。
「いいよ?」
「向かうぞ」
返事は聞かなかった。
すでにわかっていたからだ。
新出の足取りは軽い。
…welcome to home world.
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