第40話海での海水浴と危機

「海だー!」



 朝食を終え着替えたユーリア達は、海へ来ていた。

 皆水着に着替え、ティナに至っては浮き輪を手に大はしゃぎだ。


 新しい水着を三人で買いに行って、花柄だけは統一だ。


 ティナは全体がエメラルドグリーンの水着で、胸元に花のコサージュがつき、フリルのあしらってあるミニスカート丈のビキニ。

 ベティーナ先輩は紺色に白や赤の花が描かれた、背中の空いたロング丈のワンピース型の水着。

 2人ともとても似合っている。



「ユーリア、海ついたよ。脱げー!」



 ティナにユーリアは追いかけられ砂浜を走る。


 ユーリアはまだ上に服を着ているのだ。



「いやいや。恥ずかしい」



 ティナとユーリアの攻防は続いていたが、周囲はそれをあたたかい目で見守っていた。



「お二人は大変楽しそうでございますから、皆様はこちらでどうぞ水分補給をされて下さい。

 こちらの海には魔獣は入ってこれないよう魔術具が施されておりますからご安心して、泳いでいただいて結構です」



 テディとフェリクスは着々と準備を終え、仮説のテントに休憩所を作っていた。


 ニノンとマノンはユーリアがこっそり用意していた水玉の色違いの水着を大喜びで着ている。


 ユーリアを捕まえたティナはフェリクスに声をかける。



「フェリクス様は水着にならないのですか? 一緒に海に入りましょうよ」



 フェリクスとテディはいつもの姿だったのだ。

 ティナは水着姿のフェリクスと遊ぶ予定だったようだ。

 ティナの問いにフェリクスは首を横に振った。



「皆様が安心して遊べるように、私とテディは警護に着きますので、せっかくのお誘いですが、海へは入れません」



 ティナは残念がっているが、次の楽しみが待っているので、そこまで落ち込まなかった。



「ドニ、ヤンこれを見ろー!」



 ティナは捕まえているユーリアのウィッグを取り、伊達眼鏡も外す。

 すると金髪の髪をまとめている女性が目の前に現れたのだ。



「ティナ急にとったら髪の毛痛いよー。髪型も直さなきゃ〜」



 ユーリアは一旦髪をほどき、癖のある長い髪を下ろした。



「あの時の女……」



 ヤンは呟きドニ、シェルトは絶句している。ユーリアと同一人物である事が今ティナによってバラされたのである。



「そして、男ども絶句するがいい!」



 ティナはとどめとばかりにユーリアの上着を脱がせた。


 上は赤の水着に白の花柄のパレオを身につけている。

 ネックレスとブレスレットはルーカスからもらったものだ。

 返却しようとしたら断られたので所持していたが、ティナに付けろと言われたので付けている。

 流石に指輪までは出来なかった。



「ティナひどい」



 ユーリアは胸元を抑え、涙目でティナを見る。

 ティナは膨れ面でユーリアを睨むと怒鳴る。



「そんなに立派なもんがあるのに恥ずかしいって何さー。こんなのユーリアがいつも着てる寝巻きとそんなに変わらないじゃん!」



 ユーリアはネグリジェを愛用しているが、ここまで露出度は高くないはずだ。



「ティナ様、ユーリア様をいじめるのはそれくらいにしてあげて下さい。十分に結果は出ておりますよ」



 テディがティナに話しかける。周囲の男子達は唖然としており、口が半開きである。

 その表情が見たかったとばかりに、ティナとテディは黒い笑みを浮かべていた。

 テディはさっと髪をまとめ直し、編み込み入りのお団子を作ってくれる。



「テディまでひどい! ティナ上着返してー!」



 今度はティナをユーリアが追いかける。

 砂浜を少し走っていると、屋敷の方から声がかかった。





「ユーリア、久しぶり。元気そうだね!」



 声の先には何ヶ月かぶりの兄だ。

 後ろに何か余計なものがいるが気にしない。


 兄も水着姿で、一緒に遊んでくれるようだ。



「ディオンお兄様お久しぶりです。お会いしたかったです」



 久方ぶりの兄との抱擁を交わす。優しく頭を撫でてくれて心が安らかになる。



「僕もいるぞ!」



 小さいから気づかなかったが、ディオンの足からひょこっと弟が顔を出す。



「ジェルジュもお久しぶり。兄さんの言うことちゃんと聞いていたかしら?」



 弟にも抱きついて、頭を撫で撫でしてあげる。まだ5歳と小さいので可愛くて仕方がないのだ。



「僕はいつでもいい子だ。急にいなくなるから心配したんだぞ!」



 弟には何も知らせずに旅立ってしまっていたのだ。悲しい思いをさせて悪かったと、ギュっと力を込めて抱きしめる。



「ごめんね。あんまり皆に歓迎されない話だったから、ジェルジュにもお話出来なかったのよ。でもこうやってまた顔を出すから、遊んでね」



 涙目のジェルジュは涙を拭いて、ニコッとした。



「ユーリアが言うなら遊んでやる」



 よかったよかったと頭をポンポンしてあげていると、兄の後ろにいた会いたくない人から声がかかる。



「あれ、俺への抱擁はないわけー。俺も何にも聞いてなかったんだけど?」



 両手を広げているのは、兄の親友であるハインツだ。真面目な兄と正反対で、ノリが軽いので苦手なのだ。

 ハインツを無視して、兄や弟を皆へと紹介しにいく。



「皆、私の兄のディオンと弟のジェルジュ。今日は一緒に遊びましょう! お兄様ジェルジュ、皆は私のクラスメイトのティナ、ベネディクト、ドニ、ヤン。イーヴァル先輩とベティーナ先輩、シェルト先輩と担任のルーカス先生です」



 一人一人紹介したところで、後ろからお腹に抱きつかれる。



「ねえねえ、ユーリアちゃん俺の紹介なくないかなー? 俺はハインツ。ユーリアちゃんのお兄ちゃんのお友達さ」


「離れてください!」



 ユーリアは必死に腹に回された手を解こうとするが、なかなか外れない。そんな中足元にも伏兵がいた。



「こら、ジェルジュ返しなさい」



 ユーリアのパレオを引っ張って持ち去っていく。

 ジェルジュはこちらを見て舌を出すと、ダッシュで逃げていく。



「ジェルジュ〜! ……離して!」



 ハインツの鳩尾に肘打ちをすると、ジェルジュを追いかける。

 ハインツへの攻撃は見事に炸裂したようで、お腹を押さえ、うずくまっている。



「ユーリアちゃん相変わらず、えげつないねえ」



 ハインツの声に、兄がハインツの肩に手を置き話しかけた。



「ユーリアの事からかうからこうなるんだろ? 見た目と違ってお天馬なんだから……」



 ジェルジュと追いかけっこをしていると、すぐに捕まえた。パレオごと抱き上げる。



「ジェルジュ。またハインツに買収されたわね。お姉ちゃんが美味しいおやつ用意しているから返しなさい」



 皆の元に歩いて行きながら、ジェルジュに優しく話しかける。

 ジェルジュは首を横に振ると、ぎゅっとパレオを握りしめる。



「嫌だ。これを取ったら、ユーリアが遊んでくれるって言ってた。お菓子なんてハインツに貰わない」



 ハインツは子供心を巧みに操り、パレオを取らせたようだ。許せない。

 そして、純粋な弟に可愛さが増す。



「じゃあ、今日はお姉ちゃん達と一緒にいっぱい遊ぼ!」



 ぎゅーっと抱きしめる。



「ニノンとも遊ぼう?」


「マノンとも!」



 ニノン、マノンがこちらにきて同年代の子供がいた事で、ジェルジュも嬉しくなったようだ。抱きついていた手を離れ、ニノンとマノンと遊び始める。



「ジェルジュ君。パレオはお姉さんが預かるからいっぱい遊ぼうね」



 ティナがジェルジュからパレオを預かり、何故かテディに預けている。



「テディ。パレオ返して!」



 テディはニヤッと黒い笑みを浮かべると首を横に振る。



「ユーリア様これから海に入るのですからこれは不要かと思います。さあ、ジェルジュ様と遊んであげて下さい」



 テディに肩を押され、海の方へと向かう。






 ベティーナ、イーヴァル、シェルトの3人はテントにいるようだ。


 ルーカス、男子組3人とティナ、子供達と兄とハインツで海へと入る。


 ティナ達は海の奥まで泳ぎに出てルーカスの指導の元、泳ぎ方のレクチャーを受けているようだ。


 子供達と兄たちと共に浅瀬で走り回ったり、ハインツを砂で埋めたりして遊んだ。



「ユーリアにはたくさん友達ができたんだね……。楽しそうで何よりだ」



 ハインツで子供達が遊んでいる間、砂浜に兄と二人で座り、話す。



「ここにいる頃は本当に家の重圧がすごかっただろ? どこにいてもクィントン家の娘として見られている。この国の初等部の学校でさえ、友達という友達はいなかっただろう?

 ユーリアがこの国を出たいって言った時に送り出すか本当に迷ったんだよ。

 けど、少しでもこの環境から離れられるならって後押しして良かったと思ってるよ」


「兄様、私だけ逃げてしまって申し訳ありませんでした。兄様は今もお辛いでしょうに……」



 ディオンをこの国に残してしまったという事は、義母や祖父達の目が全てディオンに向かってしまっている。

 ユーリアがいなければ全ての重圧がディオンに向かっているだろう。



「僕は基本的には家の治療院よりも、学園の研究室や治療院にいるからな……あまりこちらにプレッシャーは来てないさ。

あくまで養子だから……これからジェルジュも大変になるかと思ったけど、甘やかされてそうだから、彼も大丈夫だよ。ユーリアみたいな板挟みにはならないよ」


 ディオンは優秀な医術師だが、血の繋がりがない。祖父はそれを惜しいと持てる知識をディオンに教え込んだのだが、周りがそれをよしとしないため、兄は学園の院へと進み、医術の研究をしていたのだ。

 兄が重圧を感じていないのであれば一安心だ。



「兄様。ありがとう」



 兄の肩にもたれ掛かる。ハインツがすかさず砂の山から出てきて、割って入ってこようとする。



「ねえ、ユーリアちゃん俺も頑張ったんだよー。魔術の研究。ユーリアちゃんというブレーンを失って俺らの班ガタガタだったんだから!」



 ユーリアは初等部に通いながら、時々兄の学院へと赴いていたところ、兄の親友である魔術の研究をしているハインツに、魔術の研究を押し付けられていた時期があったのだ。



「そもそも、初等部の生徒の帰る時間が早いからって研究に付き合わせているのはいけない事だと思いますけど、普通10歳の女の子スカウトしますか?」


「だってユーリアちゃんあの頃にはもう他の子より身長も高くて大人びていたから、10歳だなんて分からなかったんだよー! だって精神年齢は実際今の俺と変わらないだろう?」



 ユーリアは10歳の頃には成長を早める魔術を使っていたので、14歳くらいの見た目にはなっていたのだ。精神年齢は確かにハインツよりは上であろう。



「だからって兄を使って勧誘とか許せません。お兄様もハインツからのお願いを断れないんですから……学部が異なるのに2人が仲のいい理由が本当に分かりません」


「だって、俺らそれぞれの学部で首席だし……頭の良い物同士通じる部分があるんだよなー」



 ハインツはディオンの肩に手を置き一人でウンウンと納得している。

 ディオンは笑いながらユーリアに話しかける。



「こんなやつだけど、一緒にいて楽しいだろう? ユーリアもあんまりハインツをいじめないでね。仲良くして……」


「はい。分かっています。お兄様」



 ディオンに笑顔で頭を撫でられると、ユーリアは弱いのだ。


 ハインツたちとワイワイ昔の話をしていると、海からドゴンとすごい音がした。








 ドニの魔力が感じられるので、魔法の練習をしているのかと思いきや、大きな影が海の中にいる。

 恐らく防衛の魔術具の力を上回る魔獣が入り込んでいる。



「テディ。浜にいる者の警護を。フェリクス、ニノン、マノンは海にいる皆を退避させるわよ。

 ジェルジュ。兄様の言うことをよく聞くのよ。

 兄様皆の所に行ってきます。後はテディのそばから離れないで!」


「分かったよ。ユーリア気をつけて!」



 緊迫した空気の中、海へと向かって走る。後ろからハインツがついてきている。



「ユーリアちゃん久々じゃない? 魔獣狩りー! こういうデートもたまにはいいね!」


「この状況でふざけた事いわないでください。

 最速で行きますよ。

 氷魔法で海に足場を作ります。風魔法でうまくついてきてくださいね!」


「この感覚本当懐かしいぜ、ユーリア!」



 ユーリアは氷魔法で砂浜からルーカスたちの近くまで道を作ると、氷を炎で平らにし、風魔法でその上を滑るように進む。


 ルーカスたちのもとへとすぐに着いたので、足場を作り引き上げる。



「すまん。ユーリア。急に海の中からティナが引き込まれそうになってな。ドニの魔法のおかげで一旦距離を置方ようだ」



 ルーカスが謝りながら、氷で作った足場へ上がってくる。氷の上は寒いだろうが、少し我慢だ。


 四人も足場へと上がってくる。



「ティナ、大丈夫! 見せて!」



 ティナが足場に上がってくると、体を見ると足を引っ張られたようで、足に跡が残っていた。



「ユーリア、怖かったよ〜」



 ティナは泣きながらユーリアに抱きついた。少し落ち着くように背中を撫でる。



「ティナここは危険だから、私の兄様に治療してもらって。彼は一流の医術師よ。

 フェリクス。ティナを兄様のところへ」



 フェリクスに抱き上げられ、飛び立とうとするフェリクスの背中からティナの声が聞こえる。



「ユーリアはどうするの?」


「ティナ行って、足の傷から魔力を吸われている可能性がある。治療は必要よ。

 それにそんな厄介な魔獣置いておけないでしょ? 皆の避難が終わったら、撤退も考えるから大丈夫」


「ゆーりあー!」



 ティナの声が遠くに聞こえた。

 ニノンとマノンは鳥型になり、魔力を少し渡し大きめの鳥に形を変える。



「ベネディクト、ドニ、ヤン、ルーカス先生。二人ずつ乗って砂浜へテディがいるから向こうは安全です」



 すると、海の中から妨害が入る。

 氷の真ん中を大きな足で割ってきたのだ。


 ユーリア、ハインツとほかの皆が別れてしまった。



「ユーリア俺たちも援護するぞ!」



 ベネディクトが声をかけてくるが、危険だ。


 足がいつ来るか分からないため、ニノンとマノンに命令する。



「ニノン、マノンすぐに皆が乗らないようであれば、くちばしと足で二人ずつ浜へと運びなさい。

 怪我しない程度の力加減にしなさいよ」


「分かったー」



 ニノン、マノンは皆が動き回るよりも早く口と足で掴み。浜へと向かった。


 グエッという声が漏れた気がするが、構っている暇はない。






「ハインツ、この国の防衛と、こっちで発動させた魔術具抜けてきたって事はなかなかの魔獣よ」


「俺らも一時、陸まで撤退するか? 武器なしじゃあまり大した魔法も使えねえぞ」



 学生の身で、騎士団にも招集される事のあるハインツでさえ弱腰だ。恐らく今回いるのはそれくらい手強い。

杖などの媒介があった方が魔法の制御などが容易なのだ。



「皆を避難させたし、今のうちに撤退するしかなさそうね。ハインツ雷魔法は使える? 私は苦手」


「あいよ。俺たちが逃げるまでは少し痺れててもらいますか!」



 ユーリアは海から離れた所に足場を作り、感電しないように距離を置く。


 ハインツもユーリアの元へやってくると海に向けて雷を落とした。

 魔獣がどこに潜んでいるかまでは分からないが、海の中に落とせば、多少のダメージは与えられているだろう。



「ハインツ行くわよ」



 氷魔法で足場を作り、ハインツが先をいく。

 ユーリアは後ろを振り返るが魔獣が追ってくる気配はない。


 一気に加速し、陸近くまで来た時、急に後ろへと引っ張られ足で絡めとられる。


 海から出現したのはアンモナイトのような形をした魔獣だ。


 殻にこもりダメージを最小限に留めたのであろう。






「ユーリア!」



 ハインツの声が聞こえる。陸に近づき体の大部分が露出した魔獣の姿が見え、皆驚愕している。



「よりにもよって色付きのルクイドかよ」



 ハインツは魔獣に向かって魔法を放つが足ではらわれる。ハインツに向かっても足が伸ばされ。足場は破壊されていく。



「ち、出力が上手くいかねえ。動きもいい。ユーリア大丈夫か!」



 ハインツの大きな声が聞こえるが、身動きが取れず、魔力を吸われているのか魔力がうまく回らない。もしかすると毒に侵されている。



「魔力吸われてるの……魔法が使えない——こふっ」



 声を出した事で、魔獣の足に込める力が増し、内臓を圧迫される。

 ユーリアを取り込もうと殻の中に足を引っ込めようとする。



「きゃっ」



 閃光が走り、ユーリアを掴んでいた足が切り落とされた。テディが間に合ったようで、左手にユーリアを抱えながら、右腕をレイピアに変えて足を切り落として行く。



「ありがとうテディ。そして、ごめん。私の魔力吸われてる。そして、何か毒も……」



 ユーリアはか細い呼吸をしながら、テディに状況を説明する。



「ユーリア様の魔力を吸うなど言語道断ですね。厄介な事になりました」



 テディに斬り付けられていた足は再生している。

 痛みに怒り狂った魔獣は、水魔法で数多の水の塊をこちらに飛ばしてきた。

 テディはかわし、ハインツは防御魔法を展開している。

 陸へも届いたようで、ティナやドニの防御魔法と、フェリクスたちの火魔法で相殺したようだ。



「だいぶ力を吸われているようですね……元から上位種のはずですが、まるで知性を感じられません。

 何かおかしいです」



 テディが上空から魔獣を見る。魔獣独特の交信を試みているようだ。

 荒れ狂ったままで魔法を使い続けており、テディの話を聞いているようには見えない。



「マズイ!」



 テディが自分とハインツの前に盾を出す。

 魔獣が出してきたのは消化液だ。


 ドロドロに金属の盾が溶ける。



「こちらからの問いにも答えない……上位種を殺すのは気がひけるのですが、この状況では致し方ないか……」



 テディはハインツにユーリアを預け、大きな剣を生成する。


 熱気が出る剣を上段から振り抜く。





 魔獣が真っ二つになり中からはどろっとした黒い液体が吹き出してくる。


 ユーリアたちの元へとその液体は迫ってくる。

 ハインツが必死に防御魔法を展開させているが、魔法ごと魔力を吸収し始めた。



「やばいぞ、これ。魔力をどんどん持ってかれる」



 テディは自分に迫りくる液体にこちらへ来る余裕がない。



「ユーリア様っ!」



 苦しい声を上げたテディ。浜にいるルーカスがユーリアの作った脆くなった足場からこちらに来ようとしているが、液体がそちらにまで浸食しているようで前へは進めない。

 苦虫を潰した顔で砂に武器を突き刺す。


 フェリクス達も護衛を任されているので、動きたくても動けない。


 すると、空から声がかかる。



「ユーリア!」



 黒い大きな鷲にまたがり、杖を構えている若い男が現れた。

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