第11話ほのぼの休日と風呂上がりドッキリ

 次の日、ティナたちと4人で日用品の買い出しだ。

 噴水広場を待ち合わせである。

 ユーリアは制服で向かう。

 ベネディクトがいつものように迎えに来て「制服なのか?」と聞かれるが、今日着れるような私服はない。

 服も追々買い出さなくてはならない。



「ユーリア、ここ。ドニはもう来てるよ」



 ティナにも「ユーリアは制服なの?」と聞かれた。



「実家、最低限のもの。持ってきてない」


「それは、残念だったよねードニ。私服、見たかったよね!」



 ドニはそう言われると少し顔を俯ける。



「ティナ。かわいい」


「本当に? ありがとう!」



 ユーリアがティナを褒めると、ティナがユーリアに抱きついてくる。ツインテールが揺れて、更に可愛さを引き立てている。



「じゃー。行くぞ、ドニも残念がってないで行くぞー」



 ベネディクトに急かされて4人は移動する。





 *


 ベネディクトは重いものを重点的に持ってくれて、お隣さんということもあり、ユーリアの買い出したものを持ってくれている。

 一通りの買い物が終わるとちょうどお昼だった。



「んー、買い物って楽しー。ね、ユーリアは楽しい?」


「買い物ストレス発散」


「わっかるー。その気持ち。たくさん買えば買うほど気持ちが晴れてくよねー。勉強なんてへっちゃらだってなるよね」



 勉強の話が出たことで、ベネディクトとドニは表情を暗くさせる。ベネディクトは腕をさすっている。



「せっかくの休みに勉強なんて思い出させるなよ」


「でも、来週からは実技の授業もあるわよ。ベネディクトは得意でしょ!」


「ああ、体動かすのは得意だぜ」


「僕は皆さんと離れて授業を受けるのは少し寂しいです」


「皆とじゃないでしょ。ユーリアとでしょ」



 ティナがボソリと呟くとドニは顔を真っ赤にさせる。ベネディクトはなんとも言えない顔をしている。



「あ、あそこの雑貨屋さんかわいい! ユーリア一緒に見に行こう?」


「うん」


「ドニとベネディクトは先にあそこのカフェに入ってていいよー。荷物重いだろうし」



 2人で雑貨屋さんに向かう、アンティークっぽい小物や文具動物をモチーフにした置物が置いてあった。

 ユーリアは猫がワンポイントで描かれているペンを、じっと見ている。



「ユーリア。それ気に入ったの?」



 ティナがユーリアの手元を覗き込んできた。ユーリアは首を大きく縦に降る。



「じゃあ、私はウサギ柄買おう。お揃いだね」



 2人でお揃いの筆記用具を買い、満足して残る2人が待つカフェへと向かった。



「ねえ、ユーリア。お洋服あまりないんでしょ?

 よかったらまた来週の休みにでも買いに行かない?」


「うん。いいの?」


「バイトも来週は入れてないから大丈夫」


「バイト、決めたんだ……」


「うん。制服可愛いから即決だよ」



 ティナがバイトを決めたということに焦りを感じつつ、金欠にならないよう治療院でのバイトをする事を心に決めたユーリアだった。


 その後ランチを終え、皆でそれぞれ帰る。ドニはこれから治療院でティナはバイトがあるらしい。



「それにしても買い込んだよな。俺いなかったらお前大変じゃん」



 自分の荷物とユーリアの荷物を抱えたベネディクトがこぼす。



「ベネディクトいてよかった。ありがとう」


「どういたしまして」



 部屋に着くと、早速購入した日用品を捌くのであった。






 テディの仕事の面接はすぐに終わった。即決で採用となった。


 ただ、店主のホルストには驚かれた。ユーリアの格好が以前ルーカスと店を訪れた時と違ったからだ。

 午前中にオシャレをせずに、悔しい思いをしたので、できる限りテディに見立ててもらい、オシャレしてカフェに向かったのである。


 たまには私服もいいなと思いつつ、家に戻ったユーリアはお風呂に入った後、テディと話をする。



「採用おめでとう! 今度友達とお茶しに行くね!」


「ええ、楽しみにお待ちしておりますが、少々仕事に慣れるまではお時間を下さいね。主人のことは完璧な形でお迎えしたいですから」


「分かったよー。美味しいご飯期待してるね」



 ドンドンドン。誰かがノックをする音がする。



「ん。こんな時間に誰だろ? テディ戻って」


「お待ち下さい。その格好では……」



 ユーリアは焦ってテディを召喚魔石に戻したので、テディの言葉は最後まで聞いていなかった。




 *


「ユーリア俺だよ」



 ドアの外からはベネディクトの声が聞こえる。

 お隣さんとはいえ夜にやってくることはなかったので、何か緊急の要件かと急いで扉を開ける。



「シャンプー買い忘れちゃってさー。貸して……」


「ベネディクト、シャワー貸す。そのまま使っていけばいい」



  ベネディクトは濡れた髪でタオルを腰に巻いている。

 頭を恥ずかしそうにかいたポーズのまま、ユーリアを見て硬直していた。

 ユーリアは不思議そうに首を傾げると、ベネディクトの顔が真っ赤に染まった。


 すると、バタンと扉が閉められてしまった。


 次の登校日、朝ベネディクトは顔を出さず、久しぶりに一人で登校した。

 ホームルーム前もこちらにやって来ず、別の男子生徒と話をしているようだった。

 ユーリアと一緒にいたドニとティナは、今日から実技始まるので、何か話があるのかなと首を傾げていた。

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