エピローグ

「都市がもう見えなくなりましたよ!バイクって凄いですね」


「馬だと違うんですか?」


「私もよくは知りません。ですが都市が見えない距離は1日は掛かると思います」


マイバイクを走らせて30キロ、大体一時間程。それが馬だと1日は掛かるのか。

それを思うと幕末までの時代って想像以上の苦労してたんだろうな。


でも、織田信長が生きて天下統一を成していればその頃には船も車も普通にあったかもしれないと言われてるから、それを思うと複雑な気持ちだ。


「それでミノルさん、気の向くままと言ってましたが本当に何処に向かってるのですか?」


「ここを西に向かうと海があるらしいのでそこを目指そうかと」


「そこでキャンプですか?」


「はい、海の浜辺近くでのキャンプは景色がいいですよ」


「楽しみですねぇ。それでしたら私ノポリ港に行ってみたいですね。そこは港町がありまして海産料理美味しいらしいですよ」


「でも、その前に別のところでキャンプです」


マイバイクに取り付けているスマホホルダーにスマホを固定してマップを確認しているところ10キロ行った先に湖があるらしい。

そこで湖畔キャンプを行うのだ。


◇◇◇


砂漠の湖みたいに草原の中に一ヶ所、小さな林に取り囲まれた湖畔。

陽の光が反射して輝く湖と林を背景にした景色が穏やかな空間を作っている。


「みずきらきらで、つめたくてきもちいいのぉ!!」


起こした瞬間、待ってたいたかのようにミコちゃんは湖を見てワイワイとはしゃぎ始め、アナさんがサイドカーから下ろすと湖へと駆け出していった。


そして、今追っていったアナさんと楽しく遊んでいる。

水に濡らさないようにアナさんにお揃いで髪をポニーテールに纏められた姿を見るのは眼福だ。


さて、俺はその間にサイトを決めてテントやタープを設置しましょうかね。


「ミノルーあしょぼー!」


湖の方からぴょんぴょん跳ねて笑顔で俺を呼ぶ。

あとで良いか。


40分後


「ぜ、全力で遊びすぎた」


「ミノルさん大丈夫ですか?」


「ミノル…ぜぇーぜぇー!」


何で二人とも全力投球でまだまだ元気なの。

これでも結構アクティブなんだが。

獣人さんとエルフって皆こんなに身体能力高いのか。


きゅるるる


「ミノル…おなか…ないてるの」


「ご飯にするか」


「やったのぉ〜!」


「アナさんも手伝ってもらえますか」


「勿論ですお任せください。それで何します?」


「塩焼きそばです」


「塩、ヤキソバ?」


ミコちゃんもアナさんも

そうか。この世界に焼きそばはないのか。


「塩焼きそばというのは塩と胡椒だけで味付けした麺料理です」


という訳で塩焼きそばを作ることが決定。

今回は初めて作り食べるということで、俺はアナさんとミコちゃんに作り方を教えながらの調理だ。


ミコちゃんはまだ包丁は危ないから、具材をアナさんと一緒に炒める所からになる。

キャベツ似の野菜ラベツ、人参似のリンジン(知り合いがあると願いたい名前)を3ミリの細切りにし、あとはフォレストボアのスライス肉も細長く切る。

そうすることで麺とも形が統一して味が馴染みやすくなるからだ。


それを聞いて「なるほど」とアナさんは感心を持って続けた。


麺は俺の世界のて乾麺だから沸騰した湯で茹でる。

その間にミコちゃんとアナさんで具材を炒めて塩胡椒で味付けて紙皿に移しておく。


この時、乾麺を茹でるとき塩を入れておくと時短できる。入れすぎは注意だ。

今回は入れない。


フライパンに油をひき水を良く切って麺を移してなるべくほぐさないようにして焼く。

そうするとパリモチになるんだ。

後は味付けして、具材と合わせ、さっと炒めて焼きそばは完成。

次に乾麺を茹でた水でスープを作る。

実は野菜を多めに切ってもらっていて、乾麺と一緒に茹でていた。


だから後は固形コンソメを入れればあっという間にキャベツ似ラベツと人参似のリンジンコンソメスープの完成だ。


「「「いただきます(しゅ)」」」


具材と麺をフォークで巻き口へと運ぶ。

まあ箸文化がないみたいだからフォークを渡した。


「ミノルおいしいの!口がわぁってなっておいしいの!」


「良かったな。自分で作ったからだろうな」


「ミノルもたべるの」


「食べるぞ。それと良く噛んで食べろよ」


「うん!」


ミコちゃんの笑顔は守られた。

良いなあ、可愛いわ本当に。


「アナさんはどうですか」


「……最初は塩と胡椒だけでとは思いましたけど、シンプルな味付けで具材の味も活かされて美味しいですね。あとこのスープも野菜だけなのにこの味わい深さ……さっき入れていた固形物が鍵ですか?」


目を輝かせてアナさんは俺に問い掛けた。

好奇心の塊だなアナさんは。


「はい、あれ一個に多種類の野菜を煮込んだ旨味が入ってるんです」


「ミノルさんの国は凄いですね。貿易することになれば色々幅が広がりそうですね」


「そう、ですね。ただ、こことは離れすぎていて中々、大陸から大陸に渡れないんです」


「なるほど……だからこそ技術がこれほど進んでるのですね。あれ?でもミノルさんは」


「自分の場合は運が良くて渡れただけですよ」


少し怪しまれたけど、最後は渋々といった感じだったけど納得してくれた。

言っても良いかもしれない。

けど、好奇心の多いアナさんに言ってしまうと、毎日色々聞かれそうでまったりとした時間が消える予感がする。

伏せておこう。そして、隠しきれないときに話そう。


「ごちそうさまなの」


「ごちそうさまでした」


「ごちそうさま」


そろそろ張った方がいいなテント。

本当はテントだけ張ってもらおうと思ってたけど、この際タープもやってもらおう。


「では、アナさんテントを張りましょう。ミコちゃんもやろうなぁ」


「はい」


「がんばりゅの〜!」


◇◇◇


「あれ?……引っ掛かってます?これ」


「そういうときは引っ掛かってる所にスペースを作るんです。少し待っててください」


俺が少しスペースを開けてからポールを通してもらってポールを本体隅の穴に固定する。


「完成ですね。意外に難しかったです」


「こればかりは慣れですね」


「そうですか?それにしてはミコちゃん手早いですが」


「ミコちゃんは子どもですから吸収するのが早いんですよ」


「私、そんなに年食ってませんよ」


地雷を踏んでしまったようだ。

俺はアナさんに鋭い剣幕で睨まれた。

本当に何処に女性の地雷があるか分からないな。会社の飲み会で一回だけ今回みたいに間接的に踏んでしまって、酔っ払った新人の後輩に絡まれ続けたな。


「お茶いれますね。椅子に座って休んでください」


「ミノルてつだうの」


「じゃあ一緒にアナさんに美味しいのつくってやろうな」


「な〜」


「「可愛い」」


ミコちゃんにウォータータンクから水をコッヘル鍋にいれてもらい、俺がガスコンロで沸騰させる。

その間にカップにアップルティーのインスタントの粉を入れて待つ。


やっぱり、二人はアップルティーの粉が気になったみたいで、アップルティーをいれたあとに質問された。


この先も色々聞かれるんだろうな。

けど、会話が新鮮に感じて楽しいな。


「ミノルどうちたの?」


「ん?なんでもないよ」


新しい世界でやるキャンプも新鮮で、家族以外の人とやるのもまた新鮮。

ミコちゃんと出会わなかったら、ずっとソロキャンだったかもしれないと思うと爺さんを思い出して複雑になる。


キャンプはどんな世界でも楽しくできる、そう思うとワクワクしてくるな。


――――――――――――――――――――

読んでいただきありがとうございました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転移した先でキャンプをするためアウトドア旅を始める件〜途中で保護者のいない女の子見つけました〜 翔丸 @morimaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ