新たな出立
ギルド『ディバティ』ピックスノー王国アマニティー支部
「そんなに凄い額なんですか?」
ギルド内にいる人達が盛大に転けた。
ブルータルイーグルの買い取り金額は金貨20枚。
俺の世界じゃあ金貨って千円くらいだったらしい。だから1万円で転けるほどでは。
と思っていると爺さんからメッセージが来た。
『お前さん、そっちの世界じゃ金貨は日本円で1枚10万円相当じゃ』
200万!?
思わずゴクリと喉ごしなるほど、唾を飲んだしまった。
……なるほど。確かに転けるほどだ。
俺は聞き間違いと言って誤魔化して話を続けた。
「もう少し額を下げられないですか?それにそんなにモチアルケマセンシ」
「それは問題ありません。希望する場合ギルドは貨幣管理も引き受けておりますので」
「そ、そうですか……じゃあ19枚だけ貯金お願いします」
「お預かりします。それとこちらの預金カードに名前と血印を押してお持ちください。血印を押すことで本人以外が引き落とすことがでないようになっております」
それは便利だ…けど、はぁ、凄い大金持ってしまった。
食料だけで十分だからとりあえず10万円分の金貨1枚を1万円相当の小金貨9枚、千円相当の銀貨9枚、百円相当の銅貨100枚に砕いてもらい、気になっていたブルータルイーグルことブルグルの肉を400グラムほど買った。
希少らしく400グラムで1万だった。
多すぎるので銅貨を80枚、銀貨2枚で支払った。それでも大金だけど、財布に収まるようにしたかったから良かった。
「お、ボウズ。おはようさん」
後ろから手に肩を置いて挨拶をしてくる声が聞こえた。
振り返るとドワーフのアウミクメイオルことアメルさんだった。
「アメルさん、おはようございます」
「行くのか?」
何故分かったんだ。でもめちゃくちゃ短かったけど、挨拶したかったからちょうど良かった。
「はい。昨日はありがとうございました」
「特に何もしてねぇよ。気を付けてな、今度あったら飲もうぜ」
「是非。行き付け教えてください」
「おう」
と、アメルさんと握手を交わした。
「アメルさん、カナリィさん知りませんか?」
「あいつなら仕事疲れでまだ寝てるんじゃねぇかな」
「そうですか」
「気にするなよ。俺が後で代わりにお礼を言っておく」
そして、俺はギルドを後にした。
その後、昨日寄った、おじさんの店で野菜を買いリュックに入れた。あと、デザートにベリベリ。
他に肉類等、一週間分買い込んでリュックに入れる。
なんかいつの間にかリュックがとあるネコ型ロボのポケットみたく物が多くはいるようになっていた。
「買い忘れはまだないし、量はこのくらいかな」
そして、ミコちゃん達と別れる時間となった。
戻ると教会のシスターさん数人がいて後ろからミコちゃんが飛び出して泣きながら足にしがみついた。シスターさんが離そうと頑張ってくれている。
「やぁーーーあぁ〜ミノル、いくのぉ…うぇぇぇぇぇぇぇ」
離れると大泣きされた。
「ミコちゃん、俺だって出来れば連れていきたい。でも俺一人じゃ」
「なら、もう一人いればよろしいのですね」
そう言ったのはアナさんだった。そういえばいなかった事に気が付いた。
そのアナさんは両肩からリュックを下げていた。
まさか、
「アナさん一緒に」
「はい、お供させていただきます」
「いやいや、危ないですよ」
「大丈夫です。これでも獣人ですし、心得もあります」
と言ってアナさんがアピールし始める。
そういう事ではないと思うんですよ
「ミノルさん、お願いします。確かにミノルさんのおっしゃる通りミコちゃんには外は危険すぎます。それでもミコちゃんの本当の笑顔はミノルさんがいない生まれないと思うんです。いつか同じ笑顔を向けてくれるかもしれませんが、〝いつか〟では駄目なんです。今でないと駄目なんです」
「でも皆さんに迷惑が」
「許可はいただいてます」
シスターさん達を一人一人見るように見ていくと頷いた。
そして、シスターさん全員が頭を下げた。
そこで分かった全員で考えての事だと。
「ミノル」
ミコちゃんはシスターさんから離れて足をぎゅっを抱きしめていた。
抱きしめる体は震えていた。
バイクにもテントにも防衛機能が備わってる。それに笑顔がなかったミコちゃんから笑顔を奪うのは本意じゃない。
「分かりました」
「じゃあ」
「はい。よろしくお願いします」
片膝を付いてミコちゃんと近い目線になる。
「ミコちゃん一緒に行こ」
「…うぇぇぇぇぇぇぇ」
俺はミコちゃんを抱き抱えぎゅっと抱きしめ、落ち着くまで頭も撫で続けた。
◇◇◇
中庭に置いていたバイクを持ってきた俺はミコちゃんとアナさんと入ってきた門とは反対の門前でシスター方と子ども達と別れの挨拶をしていた。
「気を付けて。祈りは忘れないこと、あと、たまにで良いので手紙出してください」
「あと、思索に耽らないことですよね」
「そうですよね」
「一言余計です……皆さんお世話になりました」
「ミノルさん、アナタスタシアとミコちゃんをよろしくお願いします」
「はい……出発します」
「分かりました」
「はいなのぉ」
そして、俺は一人の狐耳シスターさんととてもなついてくれる小さなエルフの幼い少女と共にキャンプ旅へと出発した。
◇◇◇
ブロロロロロ〜
「それにしてもミノルさん、連れていかないと言いながら小さな乗り物をバイクに付けて、最初から連れていってくれるつもりだったんですね」
「あ、あはは」
まさか爺さんが俺が街に出たときにサイドカー取り付けてたなんてな。
マイオフロードバイクを取りに中庭に行った時、サイドカーが左側に取り付けられていた。
目にした直後、『これで三人でも大丈夫じゃろ。サイドカーも破壊不能と防犯対策、防衛機能もバッチリじゃ』
という内容のメッセージが送られてきた。
他にも寝袋とかも用意してくれていたらしい。
そういうわけで、ミコちゃんとアナさんはサイドカーに乗っている。
「ミノルさん、何処に行かれるんですか?」
「そうですねぇ、気の向くまま風の吹くままってところですね。なので、このまままっすぐ行きます。そういえばミコちゃんは」
「ミコちゃんは気持ち良さそうに寝ています………その、む、胸のなかで」
「…………すいません」
一瞬、運転が乱れた。
聞かなきゃ良かった。
余計な事を聞いたせいで暫く沈黙状態になった。
うん。風が気持ちいい。
「ミノルさん。ミコちゃん共々よろしくお願いしますね」
「はい」
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