街キャン その3

ミコちゃんの保護者に、新しい親になってくれませんか?―アナさんは確かにそう言った。


話を聞いて、そうお願いするのは分かる。

だが、


「アナさん俺は反対です」


「どうしてですか」


「ミコちゃんの事を考えてという事は理解できます。ですが、そのせいでアナさんは冷静ではない。俺は多くの場所でキャンプしたくて旅をしています」


始めたばかりだけど。それは今は置いておく。


「この大陸(異世界)は俺の生まれた国とは違い危険が満ち溢れています。外には魔物、ミコちゃんを連れ去った奴隷商、盗賊だっていますよね」


アナさんは一言「はい」とだけ言って頷き俯く。ここまで言えば分かるだろう。けど、最後まで言わなければならないと思い、俺、木野実は話を続ける。


「ミコちゃんはまだ幼い、外は余りにも危険「分かっています。それでも考えてもらえませんか」…」


俺は明日発つから無理だと伝えると椅子から立ち上がりアナさんは「お願いします」と頭を深々と下げる。


今回は神爺さんの企みのような計らいで偶然居合わせたから助けられた。

魔物がいた時、神爺さんがキャンプ道具に付けてくれた防衛機能があったから偶然助かった。

バイクにもあるらしいがどちらからも離れた場合、保証できない。


「アナさん、ミコちゃんの幸せの前にミコちゃんの安全と命を考えるべきだと俺は思います。それにミコちゃんはアナさんに心を開いてますよ。料理を軽く教えてくれた事、他にもありますけど、どれも言っている時の顔は笑顔でしたよ」


アナさんは両手を胸に当てて蹲るような体勢でぽろぽろと涙を流して、嗚咽しながら泣き始めた。

気持ちが伝わっていたことが嬉しかったんだろう。


伝えれて良かった。


「ミノルさん……胸を暫く…貸してもらえませんか」


躊躇うことなどない俺は「どうぞ」と言って、アナさんの目の前まで行った。

そして、アナさんは顔を埋めて声を出して暫く泣き続けた。


「……っ…ありがとうございます」


「いえ」


「ミノルさん、明日何時に発たれますか?」


「ギルドの方にお金を受け取って、食料調達して……予定としては昼ですかね」


「そうですか。その時はまた改めて教えてください」


お見送りか。別に構わないんだけが無下にするのもどうかと思う気持ちがあるし。


「分かりました」


「ではミノルさん、また明日」


「はい、また明日」


一礼してからアナさんは施設の方に戻っていった。


施設はシスターさん達の住居でもあるらしい。どうりで建物が大きくて、部屋数が多いわけだ。


……話を聞いた限り、明日はミコちゃんに泣きつかれそうだな。

これは自意識過剰かな。


そんなことを考えながら星を30分眺め続けてから俺はテントに入り、寝間着に着替えてから寝袋で眠った。

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