街キャンその2 ミコちゃんがなつく経緯

いかんいかん。神様爺さんのせいとはいえ今はまあ何だかんだ……感謝してる。

そうしておく。


そうだ聞きたいことがあったんだよな。

よし、電話だ。


プルルル〜♪


『分かった。話そう』


いきなり爺さんが観念したぞ。

では、遠慮なく。


「爺さんさ、ミコちゃんが森にいたこと知ってたよな」


『うむ』


「何で秘密にしたんだ?」


『ほら、ワシのせいで事故にあってこっちに転移するはめになったのにお願いするのものぉ』


「それで結局その場所に転移させてる方がたち悪くないですかぁねぇ」


『……そうじゃの』


声がしょぼんと沈んでるな。これは反省してるみたいだな。

まあお陰で助けられたわけだし、オプション色々付けて貰ったし、それがあったから今無事にミコちゃん送れたわけだしな。

許してもいいか。でも、これだけは聞かないと。


「爺さん、もう隠し事はないよな」


『もうない。それは誓おう』


「信じるからな。あーそうだ、ミコちゃんが俺に直ぐになついた理由を知りたいんだが」


『それはワシの方からは言えんの。まあ近いうちにわかるじゃろ』


「分かった。ありがと爺さん」


ふぅ。近いうちねぇ。明日発つのにいつわかるんだよ。

聞けってことか?


でも、今は寛ぎたい。

………せっかくだし、教会とか施設の周り散歩してくるかな。異世界初の街だし。


まずは中庭。

中庭なだけあって広々としていて日当たり良さそうな真ん中に二つの小さな菜園があった。


図鑑アプリで写真を撮るとキュウリに似たものはメウリという名前で育て方次第でメロンみたいに甘くなるものらしい。

他にナスに似たナダックスという変な名前の野菜にキャベツとレタスの間のような名前もキャタスという七つ集めたら願いが叶うという漫画であった技みたいに融合させたような野菜があった。


次に迂回して教会の裏に回ってみると、木造の小さな物置小屋があった。気になったけど、中を見るのはな。

施設は見た。最後はホワイトチャペルのような白い教会の中だ。

という訳でお邪魔します。


中も白。木の床と椅子を除けば真っ白だ。

奥には祭壇があってそこに誰かがいた。

シスターだけど、後ろ姿で分からないな。


「あ、ミノルさん」


祭壇に立っていたのはアナさんだった。


「こんばんは」


「こんばんは。アナさん、ミコちゃんは大丈夫ですか?」


「はい。ごはんを食べて、湯浴びをして、今は他の子達と寝てます」


「そうですか、もう大丈夫なんですね」


直後、アナさんの表情は浮かないものとなった。打ち解けたとかそういう訳ではないようだ。

アナさんは「どうぞ座ってください」と言ってくれたので近くの椅子に座った。

隣に座るアナさんは耳や尻尾がへたれたように元気をなくしていた。

そして、ゆっくり口を開いた。


「ミコちゃんは施設でいつも一人なんです」


一人、浮いているとかだろうか。

でも、種族が違うからという訳ではない筈だ。

猫耳とか犬耳等の所謂、獣人の子達や鬼角(おにつの)が生えた鬼人の子達だっていたからな。


「ミコちゃんは極度人見知りでいつも部屋の隅っこにいるんです」


そうなのか。好奇心があって、積極的で優しい子だと思ってたけど。

どうやら違い。話せるようになって一緒に買い物に行けるようになるのには随分時間が掛かったらしい。


「意外ですね」


「そうですね。ミノルさんになついているのが少し妬けます」


「それは申し訳ないことを」


「いえいえ、これはミコちゃんが望んでいたことなので」


望んでいたこと?どういう事だろうか。

でもそれが、ミコちゃんが俺に初めからなついている理由なんだろう。


「くしゅん」


「アナさんよかったら続きは俺のテントで聞かせてもらっていいですか?」


早速俺はアナさんを連れてテントに戻った。

テントに興味津々になったアナさんはタープやテントの中、寝袋など観察した後俺が用意した折り畳み椅子に座った。


「このまま寛ぎたいです」


「そのまま星を眺めるのも良いですよ」


上を向いて空に輝く星を眺め始めたアナさん。

その間に俺は湯を沸かしてインスタントコーヒーを作った。


「アナさん良かったら飲んでください」


「これはカヒ、ですか?」


カヒとはこの世界のコーヒーのことらしい。

アナさんはコーヒーことカヒを飲んで椅子にもたれながら寛ぐ。


「良いですね、キャンプ」


「俺の島国には色んな場所にキャンプ専用のサイトというところがあって、そこでたくさんの人がキャンプをするんですよ」


「私の知る限りではギルド冒険者のキャンプは遠出の依頼途中に体を休めるものだと聞いてますので、楽しそうで良いですね」


色々語りたいところだけど。それは後にしないとな。


「アナさん、それでミコちゃんが望んでいたって」


アナさんはコーヒーを入れたカップをテーブルにおいてゆっくりと語り始めた。


「………ミコちゃんはエルフ族なんです」


「エルフ」


「はい。そして、エルフは特殊な能力を持って生まれるそうです」


「それで特殊な能力って」


「ミコちゃんのは未来を視る力、未来視というものです」


「なるほど、それで俺の事を」


「ミコちゃんは捨て子なんです。まだ3歳でした。理由は分かりませんが。それからミコちゃんは部屋の隅で外を眺めてるだけでした。話しかけても怯えられて……」


怯えと話すアナさんの辛そうな表情が何を意味しているのか、容易に想像できてしまう。

俺は沸き上がる気持ちを抑えて話を最後まで聞く。


「それでも私やシルさん、他のシスターの皆も合間に話しかけ続けました。それから怯えられる事がなくなったのは一年くらいです」


この後はちょっと前にアナさん少し話した通り一緒に買い物等したりしたらしい。

でも、辛いことにミコちゃんの顔に笑顔はなかったらしい。

受け答えも縦か横に首を振るだけらしい。


「ですが、今から1年前の事です。ミコちゃんが話し掛けてくれたのです。話はいつも夢の話でそこに出てくる一人のおじさんと一緒に楽しくなにかをやっているというものです」


「それが俺ですか」


「話す度にミコちゃんは『ミノルとね』『ミノルがね』と楽しそうに話すんですよ」


とは言うものの未来視が見せるのは確定した未来ではなく可能性の一つらしい。

それでもミコちゃんの心を救ったことには変わりはないとアナさんに笑顔で言った。

お礼まで言われたけど俺は直接関わった訳じゃないし、そもそも爺さんに転移させてもらう前だから複雑な気持ちだ。


でも、一つだけ分かることがある。

俺が爺さんのせいで死ぬこと決まってさぁ。

笑うしかない。

アハハハハハ。


それにしてもその時から呼び捨てだったんだのか。


「ミノルさん大丈夫ですか?」


「大丈夫です、続けてください」


「はい。それで私はミノルさんの名前を聞いたときすぐに分かりました。この人がミコちゃんを救ってくれる人だと……それでお願いがあります。ミコちゃんの保護者に、新しい親になってくれませんか?」


――――――――――――――――――――

どうも翔丸です。

長い間、投稿を出来ず申し訳ありません。


フォローを消さないで待ってくれた皆様ありがとうございます。


とはいえまた、不定期になると思います。

申し訳ありません。


それでも待ってくださると嬉しいです。

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