のんびりさせて、マジで
スマホで確認したら今の時間は午前7時半。
朝食を終えたし、そろそろ予定通り行きますか。
「それじゃあミコちゃん、昨日言った通り出掛けに行くぞ」
「わーい!!ミノルとおでかけなの!」
ミコちゃんはぴょんぴょん跳んではしゃぎ始めた。
そうかそうか。そんなに俺と出掛けたかったのかぁ。いやぁ、全く可愛いなぁこの子は。
張りきって危険性がない程度でドライブも楽しもうなぁ。
そうと決まればすぐに洗い物をしてテント片付けてバイクに乗せよう。
「ミノルおかたじゅけ…あたしも…やるの」
偉いなと思った俺はミコちゃんの頭を撫で撫でする。今日の癒し成分含め。
「じゃあ、この…」
「あたし…このおなべ、やるの」
「ミコちゃん、それ重いしお米ぇ〜じゃあ分からないか。こべりついてる物を取るのは力いるからそれは俺がやるよ」
そう言うと「や!」と大福みたいな頬をにぷぅと膨らませ拒否された。
可愛い。食べてやろうかぁ!なんてな。
ミコちゃんは昨日もだけど少し強情な所がある。嬉しい事に少なかろうがその全部が俺を思っての事だからどうするか迷いそうになるけど。
「ん〜…じゃあ、一緒にやろ。それなら良いか?」
「うん…やるの!いっしょいっしょ~」
「よし、じゃあ鍋についたやつを落とすぞ」
スポンジに洗剤をつけて泡立たせた後にミコちゃんに持たせ、俺はミコちゃんの両手を後ろから持ち一緒に雑炊で米がこべりついた小鍋を擦っていく。勿論無くなった後水を満たしてるから多少はやり易くなってる。
擦っていく事で泡立つのが珍しくはまったようでミコちゃんは楽しそうに小鍋を洗っている。
これは当分おさまらないな。
分かるぞミコちゃん。
小さい頃俺も石鹸の泡を立たせるのが楽しくて無くなるまでやってたもんだ。
後で怒られたもんよ〜。
「ミノル…おわったの」
「よし」
ウォータータンクで洗剤を洗い流して小鍋は完了。
まだ洗い物はあるので皿とスプーンをまだ安全なので任せてみると嬉しいそうにやり始めた。良い嫁になるな、これは。
ああ、あとフォークだったらやらせてない。危ないからな。
にしてもミコちゃんは手際が良い。
ご両親いないという事は洗い物とかの家事は施設でやっていたんだろうと推測できる。
「ミコちゃんは洗うの好きか?」
「…しゅきなの、ナタおねえちゃん…と、やってたの」
新情報だ。
ナタお姉ちゃん。予想でしかないけど施設の人か年上の子だろうな。でも今はこんなところにいる。
益々神爺が怪しい。
『おーい神様爺さん。聞きたいことがあるんだが』
COMINEでの反応無し。
因みに昨日から何度か電話、メッセージを送っているがミコちゃんがらみは一切返ってこない。
やっぱり確信犯だな。
沈黙は是なりだぞ神爺さん。
「ミノル〜ぜんぶおわったの」
「え?あれま」
なんと考え込んでいたらミコちゃんは任せていないコッヘルやコップまでを洗い終わらせてくれていた。
手際良いな。
「ふぁ~」
やることやって眠くなったかな?
後は自分でやって、ミコちゃんはテントの方で少し休ませるか。
あとやることは洗ってくれた食器等の水気とって、ガスコンロや寝袋なおしてタープをたたんで最後にテントを畳んでバイクに積むだけだしな。
俺はミコちゃんを抱き抱えてテントへ行く。
ミコちゃんがジーと俺を見てる視線が伝わってくる。
ガシッ
ん?どうしたいきなりミコちゃんが腕にしがみついてぶるぶる震え始めた。
「ど、どうした」
「やなの!」
「いやってな…」
クルァァァァァァ!
は?
「おおおおおおおお!」
物凄い鳴き声したので上を見てみたら昨日転移して初めて見た鷲っぽい巨大な紅い野鳥がこっち向かって来た。
ミコちゃんはジーと俺を見ていた、だから気づいたんだろう。
「って考えてる場合か!ど、どどどどどどうしよ!」
クルァァァァァァ!
ああああああ!もう無理だぁ!
せめてミコちゃんが襲われないように全身を覆い隠すように抱き締めるしか。
捕まったら……詰んだ。捕まって離したらミコちゃんは一人どうしようもできない。そう覚悟した。
スローライフが、キャンプ満喫が、ここで潰えるのか。
バンッ!!!
バンッ?
壁に当たったような音がした。
上を再度見てみる。
「ぶっ!」
なんと壁に引っ付くように鷲っぽい巨大な紅い野鳥が空中で停滞していた。
正確には進もうと翼を羽ばたかせてはいるが進まずにテントから二メートル付近離れた距離で停滞してる状態だ。
「そうだ、忘れてた」
パニックになって忘れていたがこのテントには結界機能があって俺と俺が招き入れた者しか入れなかったんだった。
はぁ、驚かすなよ。
「ミノル!」
ぶちっ!
そんな音が俺の何処かから聴こえてきた。同時に煮えたぎるような感情が溢れてきた。
「おい野鳥!何ミコちゃん泣かせてんだおらぁ!卸すぞ!」
卸せないけど。
クルァァァァァァ
「クルァ、煩い!ミコちゃん耳抑えて」
「……うん」
クルァァァァァァ
鷲っぽい巨大な紅い野鳥は学習能力が皆無なのか距離を取っては何度も結界に突撃する。
その度に何か体から電気放ってるように見えるんだけど。
そういえば同僚で魔物は魔物特有の固有魔法とかスキルをもってるとかなんとか。
小説でもあったような。
基本全部キャンプだからなぁ俺。
クルァァァァァァ!
鷲っぽい巨大な紅い野鳥再び距離を取って急降下してきた。
本当に心臓に悪いわ!
そう思いながら四つん這い状態でミコちゃんに鷲っぽい巨大な紅い野鳥も見せないようにしつつ眺めてる。
早く帰れよ。
クルァックルァッルァルァルァルァ…
んん!!?
結界に突撃して衝突した途端放電した!と思ったらそのまま地に伏して動かなくなった。
まさか防犯対策ってこれのことか?
どうやらあれは攻撃し続けて体に蓄積された防犯の電撃だったようだ。
俺のキャンプ道具本当にヤバイもんになったんだな。
暫く観察したが動かなかった。
「はぁ~、死ぬかとおもったぁ」
とにかくもう大丈夫だな。
「ミコちゃん、もう大丈夫だぞ」
「…ほ、ほんと?」
「本当だ」
ミコちゃんは紅い野鳥を見て呆然としてる。
動いてたのがいきなり動かなくなって驚いてるんだろう。
その間に俺はミコちゃんの着ているキュロットの汚れをはらった。
「…ん…ミノル、へいき?」
ここに来てミコちゃん自分じゃなくて俺の心配って天使か天使なんだな、うん。
「平気平気。ミコちゃん怖かったな」
『も』は付けんぞ。
「こわかったけど、ミノルいたから…だいじょうぶだったの!!」
ヤバい泣きそう。堪えろ。
「……よし!ミコちゃん。気を取り直して寝ようか」
「えっとね…ごはん…さめちゃったの」
うん、紅い野鳥許さん。
そういえばこいつ名前なんて言うんだ?
俺はスマホ出し図鑑アプリカメラで紅い野鳥を撮る。
本当に有難い友よ。
~検索中~
……………………………………………………
【ブルータルイーグル】
紅く巨大な体が特徴の鷲の魔物。
雑食で狂暴性が高い。知能は低い。
味は抜群に旨い。
……………………………………………………
鷲っぽいじゃなく本当に鷲だった。しかも魔物なのね。
知能が低いそれで馬鹿に突っ込んでたのか。
そして、雑食…は良いとして旨いのか。鷲なのに魔物なのに、雑食なのに。食べれられるなんてな。
「ミノル。いいにおいね…するの」
「ぷっ、あはははははは…!」
今の一言で空気が完全に良い方へと変わった。
でも確かに外見は紅い羽は所々焼け焦げただけのブルータルイーグルからは本当に良い匂いがした。
でも俺捌けないぞ。
それにこんな巨鳥持っていけない。
「取り敢えず片付けるか」
「あたしもやるの」
「働き者だなミコちゃんは」
「がんばるの~」
というわけで片付け開始だ。
どっかの鳥のせいの事もあるからタープから始めた。
個々でも結界あるらしいから、中に入れるテントを最後にした。
打ち付けたペグを取り外して張り綱も外しポールだけにして水気を拭く。
付着している水気はやりたそうだったミコちゃんが一生懸命に拭いた。
暫く乾燥させる。別に張り綱も乾燥させる。その間にポールを折り畳んで収納袋にいれ
る。乾いたら張り綱は巻き付ける。結ぶと次が邪魔くさい。
やり方は簡単。親指と小指を使って巻いていく。ある程度やったら垂直に巻いて余った部分を輪の部分に通すだけ。
タープ本体も折り畳んでいく。
最後にポール用の収納袋に入れたポールを芯にして巻いていく。
ここで一緒にミコちゃんとやっていく。
楽しそうにしながら綺麗に畳んでくれた。
最後に収納袋にタープ、綱、ペグをいれて終わり。
テントの片付けは設営の反対順でやっていけば良い。今回はミコちゃんがいて大助かりだった。
俺一人だと二人用テントでもたまにやらかすから。
ポールを折り畳む時ミコちゃんはやりたそうに見ていた。タープのポールの時は一人でやったからな。
折り畳むのを教えて実践するとミコちゃんはまたもはまってしまった。
畳む終わったら後はタープ同じように巻いて袋にいれて終わり。
「お疲れミコちゃん」
「おつかれなの。……ふぁ~」
全部片付けてしまったからな。寝かせながら早々に行くか。ドライブは一人で楽しもう。
けど、こんなのはもうこりごり。襲撃なんて入りません。
キャンプ旅をのんびりさせてくれ。
マジで。
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