ミコは好奇心旺盛
目を覚ますとテントらしい薄明かりの光射し込んでいた。
朝の6時前ってところか。何故わかるのかはだな、キャンプして続けていたら体がその時間帯前に起きるように体が出来上がっているか・ら・だYO。
朝から変なテンションなのは気にしないでくれ。
人型寝袋だからそのまま外せるがチャックが掴みにくいのなんのでな。
「うみゅ~…」
気持ち良さそうに寝てるイモムシ(マミー型寝袋に入ってる)ミコちゃん。
スゥスゥと可愛い寝息をたてて寝てる。怖い目にあっただろうから泣き寝入りするかもと思ったが杞憂で終わって良かった。
俺は朝飯を作る為にそっとテントから出る。
「んん~気持ちいいな。異世界最初の朝だ」
太陽?の昇り始めで平原へと射し込んでくる日光はどの世界でも変わらずだ。少し霧架かる景色も寒い日や自然特有の物。これも変わらない。
俺は少しそれでホッとしていた。
色々ワクワクしていたがその反面で知らない不安を持っていたようだ。
面接とか他社との対話で自分では緊張してないのに実は緊張してたのと似てる。
まあ、地理も分からない知らない世界だ。無理もないよな。
しかし、良く理解できていなかったとしても俺以上に小さな子が不安等が募ってるかもしれないと思うとどうでも良いわ。
昨日作った雑炊が少し残ってるからそれを中心に組み合わせようと思う。
言っても食材そんなに無いんだよな。あるのは(半分残っている)ひよこ豆と6パック卵、レタス2分の1、厚切りベーコン。
少ねぇ。
まあ元々ソロキャン予定だったから仕方ない。
何故卵が割れていないのかは当然神様爺さんがその他諸々直してくれた時に一緒に戻してくれたからだな。
さて、何を作るか。卵は雑炊に使ってあるしなぁ。
ミコちゃんが起き始めるくらいには作り終わりに近い状態にしたい。
材料を確認するとこれ作れと言わんばかりに鮭の切り身二切れが綺麗に残ってた。
自分で買ってきたんだけどな。
一切れは夜焼きにして、もう一切れは朝混ぜご飯にしようと思っていたんだ。
そんなわけで焼き鮭に、市販の大根ミックスサラダと雑炊に決定。
鮭は炭網焼きで少しスペースを開けてガスコンロを使って弱火でじっくり焼いていく。サラダは水で洗って水をきっておく。
その時寝起きで一層呂律の回っていないミコちゃんの声が聞こえた。
「…みにょる?、どこ?……う…うぇ」
あ、やべ、泣くのか?これ。
火を止めて俺はテントに戻った。
起きたら誰もいない、怖くなったのか。
泣き寝入りしなかったから大丈夫だと踏んで懸念していた。
「ミコちゃん!」
「ミノル…うぇぇぇぇぇ!」
安心して結局ミコちゃんは泣いてしまった。
そして、先に謝っておく。
イモムシ状態だったから先に可愛いと思ってしまったことを。
とりあえず俺は寝袋から出すより先に『安心』を優先してイモムシミコちゃんのままぎゅっと抱き締めて頭を撫でた。
「ごめん、ごめんな。一瞬でも一人にさせた」
「ぐす…ミノル…いてくれたの。ふ、ふわふわぽかぽかなの」
安心したってことで良いのかなこれは。
ふわふわぽかぽか=安心、だな。
数分程ぎゅっと抱き締めてからミコちゃんを寝袋から出した。
にしても警戒なんて全くない懐かれようだよな、これ。
「えっと…ミノル、おはようなの」
「おはようミコちゃん」
とりあえずウォータータンクの水で泣いて腫れぼった目を冷やす為にもミコちゃんと顔を洗いに行った。
ついでに一緒に歯磨きをした。バッグから歯磨きセットは取り出すときに一つしかないと思って焦ったがいつの間にか二つあった。
頼んでも無いのに用意が良すぎる。明らかに怪しい。
あの時弱ってたミコちゃんと森奥で遭遇した事が偶然なのかと俺の中で神様爺さんに疑惑がついた。
きゅるるる
「ちょっと待っててな。今朝ご飯作ってるから」
「うん」
目を離してしまって鮭は大丈夫か裏返して確認したところ大丈夫だった。
弱火だったからだな。
ふぅ一安心。
ひっくり返してもう片面も弱火で焼いていく。
あっ忘れてた。この間に雑炊の入った小鍋に水を粉末出汁を入れて温めておこう。
数分後、焼き鮭が上がったから皿に移して先にサラダと一緒に食べてもらうことにした。
雑炊は沸騰し始めた所で後少しだ。
「はい、ミコちゃんお待たせ」
「?…ミノルは…たべないの?」
「食べるよ。ちょっと後になるけど」
「じゃあ…あたしもまちゅの」
確りしてる。でも子どもはやっぱりまだ余り遠慮するべきではないと思う。
するところはしないといけないだろうけど、お腹が空いた、眠たいみたいな欲には忠実でまだあるべきだ。
「冷めたらこいつは美味しくなくなってくから俺は先に食べてほしい」
「う~ん……わかったの」
「よし!もう少ししたら俺も食べるからな」
「うん…いただきましゅ」
可愛い。
ごほんごほん。俺の鮭はアルミホイル巻いて今は保温中。
雑炊が温めなおせるまでは大丈夫だろうとふんでやっておいた。
「きょうもね…おいしいの!」
「それは良かったな」
「ミノルも…いしょいでたべりゅ」
「はい」
先に確認を怠らずに鮭とサラダだけでも一緒に食べることにした。
そして、また数分後。
温めなおし終わった雑炊をミコちゃんと自分の分の器に移してミコちゃんに渡した。
では、
「いただきます」
「あのね、ミノル。ちゅぎは…あちあち、ならないでね」
「あはは、ありがとう」
ミコちゃんは雑炊が大変気に入ったらしくおかわりを要求してきた。食欲はあるみたいだけど体はまだ完全ではないかもしれないから最初より少なめの量なら良いと説明すると「わかったの。ミノルありがとう」とニコニコと純真無垢な笑顔と共に返してくれた。
本当にええ子や。
「ごちそうさまなの」
「今日もお粗末様でした」
「…ミノル」
「ん?どうした?」
ミコちゃんは不思議なものを見るような目で俺を見ている。
どうしたんだろう。
「…えっとね…おそまつさまって…えっと、なんなの?」
なんとも子どもらしく可愛い質問だ。
「お粗末様っていうのは料理を作った人が食べてくれた人に大したものでなくて申し訳なくて謙遜してるって事だ。分かった?」
「…うん?」
分かりにくかったようだ。けど、もう少し砕いて説明したら理解した。ミコちゃん理解良いよな本当に。でも理解力だけが凄いわけではなかった。
「けん、そん、って…なんなの?」
謙遜について説明すると意味を理解したミコちゃんは今度は「そまつじゃないときは?」等数個、ミコちゃんの疑問に答えた。
ミコちゃんは好奇心旺盛だった。
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