異世界での初キャンプ飯 二品目とミコの優しさ

鶏の雑炊は鶏、卵だけ。

出汁はスープを作っているときを水を入れ小鍋をさせ、鶏は火が通りにくいから水の状態から同時に煮た。あれから時間も経過してるし確りと通ってるはず。

ミコちゃんが食べるものでもあるから物だし、一つ鶏を小鍋から取りだして真ん中を割って確認するか。


「あつっ!」


「ミノル…だいじょぶ!?」


「大丈夫だ」


まだ少しだけ不安そうな表情で俺を見ているので頭を撫でながらもう一度「大丈夫」と言うと「…わかったの」と可愛い笑顔で言ってくれた。

ヒリヒリするけど何かいけるわ。


心配させないために今度はそっと取りだして確認だ。


「よし、大丈夫だな」


「ミノル…ごちそうさま。…おいちかった、の」


「それはよかった。おかわりなくてごめんな」


少量とはいえコンソメが入ってる。何日も食べてないであろうミコちゃんに塩分を取りすぎさせてしまうのは良くないからな。

同じ理由で雑炊の方も塩は少量しか入れてない。


「いいの…ちゅぎ、まってるの!」


「……もうすぐ出来るから待ってろ!」


泣けてくるわ。優しくて。ホントにミコちゃん良い子だなぁ。

真心を倍増。いや、二十倍にじゅうべえだぁ。

次に卵を溶いておいて、飯盒の白飯を小鍋に入れる。少し出汁を吸わせてほんの少し柔くして溶き卵を少しずつ円を描きながら中心に向かって入れて火が通ったら火を止め軽くかき混ぜて。


完成。


俺は出来た雑炊を器に入れてミコちゃんの方へと渡した。


「雑炊の方はおかわりあるからな。只あまり食べ過ぎるな」


「うん…わかったの……ちょっと、まつの」


そう言ってミコちゃんは椅子から降りて器を両手で持ち可愛いマスコットキャラのようにトテトテと歩いて俺の方に来ると机に器を置いて俺の膝によじ登って座った。


「どうした?ミコちゃん」


「ミノル、さっき…あちあち、なった。だからあたしが…みみゃもるの」


「……ありがとうなぁぁ!」


「…ミノルあついの」


「おおごめん」


余りの可愛いさと優しい心につい我慢出来ずにバグをしてしまった。


逮捕はなし、無しだ。あとロリコンでもないからな。何故ならこの子を嫁にしたいとかそんな感情はないからだ。

寧ろ守ってやりたい気持ちだ。


「そうだ、ミコちゃん冷めすぎても美味しくないし早く食べな」


「うん!…えっと、いただきましゅ」


ん?


さっきは気付かなかったがミコちゃんは手を合わせて「いただきます」ではなくて指を絡めて祈るようにして言ってるな。

そういうのってドラマとかアニメとかでしか見た事ないけど。

やっぱりミコちゃんは。


「スープいろんなあじしておいしかったけど、これもいろんなあじしておいしいの」


「そっか……なあミコちゃん一つ聞いても良いかな」


「(もぐもぐ)……な、に?」


「言いづらかったら良い……今親御さんは何処にいるんだ?森に一緒に来てたならな後で俺は探しに行こうと思ってるから…」


「…えっと、いないの。ミコには…親は、ね…いないの」


やっぱりか。

一般家庭でも祈りを捧げて食べる国はある。

でも、それにしては痩せ細って、全身汚れていた。それが何日も森に一人だったかもしれない予想。それが当たってしまった。森でじゃなく、ずっと前から。

捨てられたか、もしくは別の理由。


「ありがとう。ごめんな」


「おやのこと…わからない…の。だから…ね、あの…いいの」


ズキッとした。次に圧迫されたような息苦しさが俺を襲った。

親が分からない。

俺には居たから理解できないだろう。

だけど、一度だけ両親共に俺がまだ幼稚園くらいに出掛けて一人だった時がある。

両親が帰ってきたとき俺は大泣きしていたそうだ。

多分、俺以外誰もいない家。静かで、俺のいる場所以外暗くて、いつ帰ってくるのか不安で堪らなかったんだろう。


だから、親の事が元々分からない事が俺にはとても辛く感じる。


「…ミノル?…どうちたの?また、あちゅかった?」


「…ああ。雑炊がまだ熱すぎたんだ」


「じゃあ!あたしがさますの」


ありがとう、ミコちゃん。

そう心のなかで感謝した。

俺は涙を拭った。自分が泣いても仕方ない。

何より今ミコちゃんは笑顔だ。少し人を気にしすぎてはいるが優しい証拠だ。

俺が不安を作って心配させてたら意味がない。

明るく今は生きている。今はそれで良い。


「いただきます」


そういえばまだスープにすら手をつけてなかった。


「うん!確かに上手い、美味しい」


鶏から出汁が出ていて卵がそれを包み込んで優しい味にしていて美味い。

冷めかけていたがトマトスープも美味しかった。


「ミノル…おかわりなの。えっと…す、すこしなの!」


「はいよ」


何日かここでキャンプする予定だったが街を明日は目指そう。

道沿いがあるならそう遠くないだろう。それにバイクならそうかからないはずだ。

教会探してミコちゃんを保護してもらおう。


「なあミコちゃん何処から来た?」


「………」


ミコちゃんの様子が変わった。何かに怯えるように、小刻みにぷるぷると震え始めて器を持ったまま上半身だけを俺の方に向けて顔を埋めた。

これは益々保護して貰わないといけなくなった。


「ここは俺とミコちゃん以外は入れないくらいに安全だから安心してくれ。あとごめんな。もう聞かない」


「……うん」


爺さんに感謝だな。ホントに。


「よし、食って寝て。明日は俺とお出掛けだ」


「ほんと…やったの〜!」


両手に雑炊の入った器を持っているミコちゃんはパタパタと裸足の足を動かして喜ぶ。



「ごちそうしゃまなの!」


「お粗末様でした。さて」


顔とか汚れてる部分は寝てるとき拭いたけど。

服がなぁ。俺の着させてもつまづいたりとかで危ないだけだし。


ブッブー


「ん?COMINEから?」


スマホを見てみると『神様からのメッセージがあります』と表示されていた。


「あの神爺さんいつの間に」


「?…どうちたの?」


「いや何でもない」


チャット画面に移動して見ると…


『特別じゃ、その子の新しいの服を用意しておいたぞ』


特別?散々俺に干渉してるのにか?

そんな事を考えてると新しいメッセージが来た。


『特別な理由じゃが、お前さんには干渉して良いことにはなっとるが他のものには干渉してはならんのでな。緊急時でお前さんが関わってしまったという事での特別措置じゃ』


そうだったのか。それは悪いことしたな。

感謝致します。

じゃあ当分はしない方が良いな。

ミコちゃんの事を話しそうだし、質問しそうだし。


『相談はよいからな』


どんだけ寂しがり屋だあのじじい!

まったく。この寂しがり様の感じだとまだ話していないことありそうだな。


「んにゅ」


お腹が満たされて睡魔が襲ってきたな。うとうととして、こっくり、と頭を揺らしてる。


「そろそろ寝るか」


「ま、まだ、だいじょぶなの」


何か遠慮しているのか。頭をブンブン横に振る。

もう夜だ。COMINEで神爺さんのを見てたときにはもう時間は7時を少し過ぎていた。

子どもが寝る時間にはちょうど良い。

遠慮するものではないのだが、頑なに寝ようとしない。

どうするか。

お風呂はないし、水浴び出来るところもない、体は手洗い様に蛇口蓋付きのウォータータンクを持ってきてるから拭くことはできるな。


「なら体を拭いて服を着替えようか」


「……うん」


「じゃあさっきミコちゃんが寝てたテントで着替えてきて、俺も近くにいるから」


「…ほんと?」


「本当。だから安心しな」


「うん!」



トテトテと歩くミコちゃんとテントへと入り、俺は体だけ拭いて出てから入り口を着替え終わったら呼ぶようにと言いながら閉じた。

拒否される事も、泣かれる事も無かったから安心してくれたんだろう。


「…ミノル〜」


「終わったか?」


テントのチャックを開けミコちゃんが出てくると着ていた服に俺はすぐ目が行った。


「なんでや」


この異世界に馴染ませるように少しアレンジはされているが間違いなく小学生セーラー服?いや、これはキュロットって言うのか。ミコちゃんの髪の色と同じ朱色だ。

靴はこの異世界のものっぽいブーツ。

まさか神爺さんにこんな趣味があったとは。

まあいいか。

ミコちゃん「可愛いの!」って気に入ったみたいだし。


「よし、寝るぞ」


「や」


「なんでそんな嫌なんだ?」


「…ねたら、んと…ミノル。ねないき、すりゅの。ねなきゃ…めっ、なの」


子どもながら勘が鋭いな。確かに付きっきりで念のため寝ずにある程度見守るつもりだった。

うん、やめよ。逆に気を使わせて寝ないようだし。

寝ずに運転したらそれこそ危ないしな。

ミコちゃんの方が確りしてる。優しさに甘えるとしよう。


「じゃあ一緒に寝るか?」


「うん!」


きらきら表情を輝かせて小さい手で俺をテントへ入れようとする。

早く寝たいのか。

気に入られたのか、只今は拠り所がほしいからか…いやこれはないか。

あの怯えようは人を怖がってた。

なら警戒されてる、はず。

暫く考えたが出てこない。


「今は寝るか」


ミコちゃんにテントの中で待ってもらい俺はタープの下で寝間着に着替えて寝袋を出した。予備、というか気分によって変えるんだが、マミー型とあと、人型の二種類の寝袋を持っている。

俺は自由に動ける人型にした。

ミコちゃんがトイレで起きたときにそのまま外に行けるからな。


マミー型に入ったミコちゃんはぴょこっと顔だけでていてイモムシみたいで超可愛い。


「お、…おやしゅみなさい、な…の…」


「おやすみ…やっぱり子どもだな」


ミコちゃんは心地よさそうにぐっすりと眠りへと落ちた。

疲れてたんだな

さてと、俺も寝るか。





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