いざ異世界キャンプ その四 女の子を保護する

……森を進んでいる最中に草むらから女の子が現れた、と思ってら直ぐに気を失った様に倒れ込んでしまった。

どどどどうする!?警察と救急車!

あっいないわ。

自己ツッコミしてる場合か!

先ずは落ち着け。こんなこと初めてだけど、急な仕事が入ってくることなんてたくさんあったでしょうが。

冷静に事態を対処するべきだ。

息は確りしてる。髪はボサボサになってるが何処も怪我をした所は見えない。

大丈夫そうだな。

えっと次は状況だ。

ここは森の奥で日は……落ちてきてる。幸運なことに今のところ他の生き物と遭遇していないそれならこの幸運が続いている間に親御さんを探すか。

いや、先ずはこの子を連れてテントに戻った方が。


「ん〜………よし、戻ろう。先ずは安全確保だ」


親御さんは戻った後で探しに行こう。バイクを走らせればなんとかなるだろ。

早速女の子を俺の前に乗せる。気を失ってるから片手で抱えてゆっくり行くしかない。

危ないが仕方ない。


ブロロロロロ…


暗くなってきたな。何も出るなよ。

それにしても調子にのって大分おくまで来てしまったようだ。

ゆっくりとはいえ木々ばかりで先が見えない。目印でも付けておくべきだった。

でもそろそろの筈だ。


「お?」


思わず声が出てなのには理由がある。

勿論平原が見え始めたからだ。

俺は慎重に走らせて漸く出ることが出来た。

森から少し距離をとって一度バイクを止める。


「ふぅ、うぁっぶね!」


緊張の糸が切れたか一瞬バイクをぐらつかせてしまった。

テント迄まだ十数分だ、降りるのはそのあとだ。


「もうちょいだ。待っててくれな」


俺は女の子を見てそういった。

撫でてやれば少し安心したりするのだろうかと思うがあいにくとハンドル握っておかないとバランス崩して倒れる可能性あるからな。

それにしても綺麗な朱色の髪だ。年齢は5、6歳くらいか。それどころじゃなくて良く見てなかった。

顔立ち良いし、今は可愛い面持ちだけど、成長してお姉さんになったらモデルとしてスカウトされるくらいにはいけるんじゃって思う。

ナチュラルに睫毛長いし、鼻は小さいし。

でも服は汚れて所々ボロボロ、裸足で所々に枝で引っ掻いたような傷がある。一体何があったんだ。


「……干渉してる場合か。親御さんを探しに行かないといけないってのに」


頭をかきむしりたい気分を少し持ちながらバイクを再度走らせてテントへと戻った。

朱毛の女の子は寝袋を広げてテントで寝かせた。

親御さんを探す前に爺さんに電話だ。ちょいと確認したいことある。


「もしもし爺さん」


『出たのは良いがちょっと待ってくれんか。ワシ今絶賛料理中での』


料理するのか爺さん。そして、神様も飯食うのな。


『食うぞ。摂らなくても良いがお前さんらの世界の飯は上手…あっつい!』


……すいません。

それから数分で調理が終わった。もうすぐ完成のところと何とも微妙なタイミングだったようだ。

本当にすいません


『いただきます。……上手いの。それでどうしたんじゃ?』


「実はですね森の奥で小さな女の子を見つけまして」


『さらったのか!?』


「違わいアホ爺!」


『冗談じゃ。全くお前さんくらいじゃ……ワシに……対等に話す人間は。今更じゃがの』


「さいですか」


俺は簡単に説明するほどの経緯では無かったが親御さんを探さねばいけない故に簡潔に話した。

つか、せめて口の中の物飲み込んでからちゃんと途切れさせず話してほしい。

仕方ないが。


「何でいずれわかるかもしれないテントのオプションを教えてほしいんです」


『そういう事なら………仕方ないの。先ずテントにもタープに破壊不能、劣化防止、防犯対策がされておる』


やっぱりという事は全部に破壊不能、防犯機能はあるんだな。


『そして、テントとタープは張る事でその範囲が結界となるんじゃよ』


俺は運を使い果たしてしまってるのかと感じてしまうほどに安全保障がされている事に驚愕してしまった。

でも何となく予想していたことは秘密だ。

結界とは思わなかったけど。ゲームとかだと相手を寄せ付けることがない奴だ。

そして、多分あの子がそんな結界と化してるテントで寝ることができているのは俺が招き入れたからだろうな。

後で聞くとその通りだった。


「ありがとうございます。安心して親御さんを探しに行けます。食事中にすいません」


『よいよい。ではの』


じゃ、探しに行くか。


「ん、むぅ」


どうやら目を覚ましたみたいだな。

テントの方へと歩く。

チャックを開けると女の子は戸惑う表情をしていて体は強張りながらぷるぷると震えながら髪と同じ朱色の瞳で俺の方へ顔を向けている。


「…えっと、大丈夫かな?何処か痛いとかないか?」


な、泣かないでくれよ。どうすれば良いかなんて俺知らないから。

もし、泣いてしまったら…全力でどうにかするしかない。


「……う」


ヤ、ヤバい。これは泣いてしまう。


「うん」


俺はコメディアニメみたいにずりこけてしまった。

まあ泣かなくて良かった。


「えっと、覚えてるかな?君、森の奥で突然気を失ったの」


質問するとふるふると朱色の長い髪をふわりと靡かせながら顔を横に振った。

無我夢中だったのかな?

おっといけない。これから親御さんを探しに行くんだった。

事情説明して行かないと。


「あ………名前は?」


呼び方に困ってしまった。


「……ミ…コ」


おろおろ、もじもじしながらもボソッとミコちゃんは教えてくれた。

可愛い。


「んにゅ」


しまった。仕草が余りにも可愛くて思わず頭を撫でてしまった。

あれ?でも何か嫌がってない。頬を赤くしてるが嬉しそうにしてくれてる?

どっちか分からないから止めよう。そして、謝ろう。


「突然頭撫でてごめんな」


「……いい、よ」


ヤベェェェェ!危険だ。

エマージェンシーエマージェンシー。

報告、いや事件です。俺はこんなにも子どもが可愛いと思ったことはない。

そして、自然に生まれた上目遣いと恥じらい。これはヤバい、どうにかなってしまいそうだ。

ミコちゃんを産んだ親御さんに……ってそうだった。親御さんを探さないと。


「あのなミコちゃん、今からおに」


きゅるるる


なんということでしょう。ミコちゃんの方から可愛いらしい空腹音がなって来たではありませんか。

ミコちゃんも少し恥ずかしいのかもじもじして顔も真っ赤にしています。5、6歳でもやはり人にお腹の音を聞かれるのは恥ずかしいのでしょう。


「……ご飯食べるか?」


「いい…の?」


俺が頷くときらきらした笑顔を見せながら「ありがとう」と言ってくれた。

めっちゃええ子や。


この時の俺は一瞬で親御さんの事を忘れていた。

一発殴ってやりたい。

誰か俺を殴れ!

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