いざ異世界キャンプ その三 合間の森探索

腕時計で時間を確認すると3時過ぎだった。昼飯にしてはにしては微妙な時間帯だ。少し時間かけて昼食兼夕食にすることにした。

事故が買い物した後で良かった…といってええんか?

クーラーボックスを開けて買った材料を確認する。


「豆に鶏肉、人参…よし」


ひよこ豆のトマトスープと…後は鶏をバターで炒める事にした。

決まったところで調理開始、と行きたいところなんだが、ひよこ豆は冷凍されたものだから今は大きな一塊だ。解凍するために冷凍ひよこ豆だけを外に出しておく。


次は暇な時間をどう過ごすかに進路方向を変えて辺りを見渡す。

その時に視界に入ったのは徒歩で30分、バイクで10分程くらいか、の少し遠くにある森だ。

頭のなかキャンプしたい欲に満ちてたからな、キャンプサイト見つけるだけでまともに周りも見てなかった。

道も森に続いているし、ある程度は安全なんだろう。


てなわけで森を散策することにした。

ひよこ豆の解凍の事もあるから移動方法はバイクだ。

離れて大丈夫かと心配が募る程不安があるが爺さんのオプションに期待しよう。

取り敢えず小道具はテントの中に粗方しまっておく。


確認もした…出発だ。


◇運転中………◇


森の前に来ると一層広い。道沿いに行っても道は決まってるし、明後日には通る予定だから俺は別ルートを行く事にした。

森の中は等間隔に木々が広がっていて、バイクでも行ける幅で今はマイバイクと共に探索している。

また木洩れ日が程好くてゆっくりと走って起こる微風と合わさって心地い。


「ここに小鳥のさえずりが…」


クルァ!


は無かった。

つか、凶暴性のある感じの鳴き声だ!ささっとここは通りすぎて別の所を探索しよう。


暫く探索した結論はやっぱりどこも木々で一杯で杉や桧に似た物が多い。

実とか実らした木がないか探してみると50センチくらいの小さな草木に赤い実がなってた。

調べようにも知識がないと考えて思い出した。

確かスマホも異世界用に調整されていた。

充電なしとかそんな事だけじゃないことを祈ってスマホの画面を開いて俺は一つのアプリをタップする。

それは俺の大学からの友人が作った図鑑アプリだ。形、長さ、色等基本的な要素の中の一つを検索項目に入れるだけで何種もの植物を特定できる。写真を撮って検索すれば似た植物だろうと茸だろうとミリ単位で区別をつけて特定する優れもの。

今は確か有名なアプリ会社の開発リーダーだったはずだ。

アウトドアなら役に立つだろうと無理矢理実験台にされ改良する度にデータを食わされたものだ。

充実してたがな。

でだ、異世界用に調整されたスマホにこの図鑑アプリが入っている。

つまり、このアプリも調整されていると見て良い筈。

それを祈ろう。


「爺さん頼むぜ」


カシャ!


◇検索中〜◇

直ぐ結果は有っても無くても出る。

そして、その結果は、

……………………………………………………

【ベリベリ】

酸味が少し強く甘味のある果実。

人気の少ない森の奥に良く育ち一つの花に複数実をならす。

食用。毒性なし。

……………………………………………………

よっしゃあ!検索に引っ掛かった。

今まで使っても試験的で道に生やしてる木とかにしてて、キャンプでも余り使う機会なんて無かったから余り使ったとは言えなかったが、異世界に来て漸く役に立てる事が出来た。

アプリ作ってくれたアイツにも感謝だがオプションの影響をアプリにも及ばしてくれてた神様爺さんにも感謝しないとな。


俺は早速これをいくつか採ることにした。

一粒食べてみた。味は最初は野苺を圧縮した味で書いてあった通り酸味が少しあった。

そして後味がブルーベリーみたいなものに変わった。

合間のデザート感覚で食べる時面白いかもな。肴作っても良いけど甘いのも欲しい。

量は小袋に半分ほど。全部採ったら次、育たないからな。

また来たときに採れるようにしておかないと。


「さてと、探索再開しますか」


そういえばこのベリベリの検索内容に人気の少ない森の奥にって書いてあったな。

という事はここは森の奥って事だよな。

夢中で大分進んでしまったらしい。

時間は4時30分。1時間半経ってる。


ガサガサ


「!…何かいる、のか?」


いや落ち着こう。凶暴な奴でもマイバイクなら森を駆使すれば何とか逃げれるはずだ。

音が心配だがな。


音が徐々に近くなってくる。だけど何処が分からない。後ろなのは分かるがバイクをそっちに向けるのは駄目だろ。

じっと見ているしかないな。


ガサ、ガサ


「え?」


驚いた余りにも予想と違い口を大きく開いてしまった。

俺とバイクの後ろの草むらから現れたのは動物でも未だに俺の中ではこの世界にいるか怪しい魔物でもなく小さな女の子だった。


そして、これから俺とこの子は共にキャンプ旅をすることになる事をこの時は思いもよらなかった。

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