第40話王太子視点
「王太子殿下、ご無沙汰しております。
危急存亡の秋、御挨拶を省略する事、お詫び申し上げます。
まず伏してお願い申し上げます。
生き延びる事を優先して、私とレナードの婚姻を破棄させていただきます。
できるだけ逃げますが、逃げきれない可能性もあります。
最悪の場合は、ハント男爵家の家名と血を残すため、ミースロッド公爵家と縁を結ぶ事を決めました。
ですかレナードと結婚したままでは、レナードとゴードン辺境伯家はもちろん、ハント男爵家の名誉も傷ついてしまいます。
一日でも早く、レナードと私の婚姻を解消してください。
どうかよろしくお願いいたします」
やれやれ、レナードの落胆が眼に浮かぶようだ。
レナードにも同じ内容の伝来用使い魔が送られているのだろう。
国王陛下にも、貴族の婚姻を記録する治部省にも送られているだろう。
だが、余が率先して行わないと、ゴードン辺境伯家とハント男爵家の名誉を傷つけたい悪意ある者達が、わざと忘れたり遅延させたりするだろう。
それにしても、思い切った決断をして、しかもそれを大々的に公表したモノだ。
確かにそれくらいしなければ、あのドルイガ相手に生き延びて家名と財産と名誉を守るとこは難しい。
これだけやっても、性根の腐った名門貴族は、レナードの事もハント男爵家の事も、悪しざまに罵る事だろう。
だが心有る貴族は、この決断を褒め称えるだろう。
余のように。
この決断に応えないのは、王太子として尊厳にかかわる。
今直ぐ王宮に向かわねばならん!
「誰かある。
今直ぐ王宮に向かう。
陛下と治部省に前触れとして伝令用使い魔と伝令を送れ。
特に治部省には、余が到着したら直ぐに、レナードとヴィヴィアンの離婚手続きが出来るように準備しておけと、厳しく命じるのだ」
これで治部省での手続きは、腐れ名門貴族共であろうと、遅延させることはできなくなるだろう。
問題は陛下の御裁可だが、余と人象種貴族家へのドルイガの襲撃を、弟達と国内名門貴族による余への暗殺計画の一環とすれば、反対も遅延もやり難くなるだろう。
それでも余りにゴチャゴチャ文句や嫌味を言うようなら、二つ三つ叩き潰してやろうか?
そうだな、そうしよう。
レナードにはいい憂さ晴らしになるし、余も鬱憤を解消できる。
だがしかし、ドルイガに襲撃されて帝国内を掻き回されただけでは、皇国に舐められてしまう。
余のためになるように動くのが大前提だが、妻を失うかもしれないレナードの今後も考えて、帝国のためになる事も少しはしておこう。
「帝国騎士団にも伝令用使い魔と伝令を送れ。
ドルイガが宮城を襲撃する可能性もある。
警備体制の強化と追撃準備を命じるのだ!」
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