第39話
「俺は大丈夫だ。
ケガはしたが、既に魔法薬で完治している。
王太子殿下も御無事だ。
だがドルイガを逃がしてしまった。
申し訳ない。
ドルイガは必ず殺すから、そのまま隠れていて欲しい。
デリラが情報を集めているだろうから、いずれ知ると思うから隠し事はしない。
ドルイガに人象種獣人貴族家が襲撃された。
王都を離れて領地にいた者もいたから、族滅とまではいわないが、王都にいた者は皆殺しにされている。
ドルイガは恐ろしく強く凶悪だ。
絶対に隠れ家からは出ないでくれ。
必ずドルイガは殺すから、それまで我慢してくれ」
レナードから長い長い返事が来ました。
父上や母上、デリラも各所に使い魔を送って情報を集めましたから、愚にもつかない噂から、歴戦の騎士の正確な報告まで、多種多様な情報を得る事ができました。
そこから家族で討論して導き出した答えは、レナード単独ではドルイガには勝てないという、とても残酷な事実でした。
「御姉様。
できる限り逃げるという私個人の方針に変わりはありません。
ですがそれが正しいとも言い切れません。
母上の申されるように、我が家に余力があるうちに、ドルイガを受け入れるという方法もあります。
可能性はとても低いですが、ブリーレの前例もあります。
御姉様がドルイガを操れる可能性も皆無ではないのです。
それに、レナードは御姉様にぞっこんです。
命を護るために、御姉様がドルイガに身を任せても、御姉様が生きてくださることを願うでしょう。
そして御姉様が生きている限り、レナードは御姉様を助けようとします。
その事を考慮して、今後の方針は御姉様自身がお決めください」
デリラが無慈悲な決断を迫ります。
父上が普段の冷徹な商人貴族の仮面を脱ぎ捨て、沈痛な表情で私を見守ってくれています。
逆に母上は、仮面のように表情を消しています。
普段私やデリラに向けてくれる慈母神のような微笑みがありません。
ハント男爵家の跡取りとしてなら、ドルイガに身を任せるべきなのでしょう。
あらゆる貴族から誹りを受けようとも、家を残すために、生きて跡継ぎを生むことが私の務めです。
レナードの妻としてなら、例え殺されても操を護るべきなのでしょう。
そうする事で、ゴードン辺境伯家の名声は高まり、後妻から産まれた子供がその名声を引き継ぐ事でしょう。
貴族家の正妻ならば、それを誇りとすべきなのでしょう。
ですが私は商人であった父上の血を色濃く引き継いでいるようです。
同時に母上の影響も受けています。
ハント男爵家の跡継ぎとして財産と家を残すだけでなく、最大の利益を目指しながら、自分とレナードの名声を護る。
今が決断すべき時です!
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