第33話
「本領地の戦力は全て臨戦態勢を整えさせています。
領民にも鐘がなったら集会所に籠城するように命じています。
傭兵の募集もしています。
隣接する人族貴族には、獣人に気をつけるように伝えています。
何時でも飛び地に転移できるように、魔法陣も整えてあります」
「そうか、よくやってくれた」
母上の報告に、父上が満面の笑みでねぎらっています。
母上にもやり切った感があります。
「母上、申し訳ないのですが、実際の配備と魔法陣の準備を見させてもらえますか?」
デリラが少し言い難そうに、でも意を決して、確認したいと言いだしました。
デリラらしいと言えばデリラらしいです。
人の言う事を鵜呑みにせずに、必ず自分で確認します。
とても慎重な性格なのです。
王都の屋敷には、屋敷自体を護る防御魔法陣と、屋敷内に侵入した敵を攻撃する魔法陣しかありませんでした。
これは王家に対する配慮です。
さすがに王都内で、屋敷の外を攻撃する魔法陣を使う訳にはいきません。
例えそれが迎撃であろうとです。
ですが自分の領地でなら、そのような配慮は必要ありません。
領地外の他領に攻撃魔法を放つわけにはいきませんが、領地内ならどのような強力な魔法を使っても大丈夫です。
王都屋敷と同等の防御魔法では護り切れない事が判明しました。
迎撃の攻撃魔法に期待するしかありません。
攻撃魔法を実際に使うのは家臣達です。
家臣達が命を賭して迎撃任務を全うしてくれるのか?
迎撃用の攻撃魔法に死角はないのか?
攻撃魔法でもドルイガを斃せなかった時にどうすべきなのか?
攻撃魔法で斃せなかった時に、城に入り込まれるまで、どれくらいの時間的余裕があるのか?
攻撃魔法で斃せなかった時に、家臣達が私達に連絡を入れる事ができるのか?
そんな事を家族全員で実際に見て回りました。
案内してくれる母上はうれしそうでした。
自分の手際を疑われたと腹を立てるのではなく、ちゃんと確認しようとしたデリラの慎重さがうれしかったようです。
私も気を付けないといけません。
他の誰でもなく、私のために家族が頑張ってくれているのですから。
「配置についた家臣達は、あらかじめ私達が送っておいた使い魔を帰す事で、現状を伝える事ができます。
ですから私達は、隠しの間から迎撃の指示が出せます。
ドルイガが現れるまでなら、通常通り執務室から指揮を執ることもできます」
城内を全て見廻ってから、最後に執務室に戻り、お茶を飲みながら話す事ができました。
父上は最初から何の心配もしていないようでしたが、デリラは少し心配していたようです。
戻って来てあきらかにホッとしていました。
「ではデリラ、今度は貴女に聞きたいことがあります」
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