第21話

「しかし父上、私はまだ納得ができません。

 何故それがミースロッド公爵家の離反にまでつながるのですか?

 そんな事をすれば、二大強国の存亡を賭けた戦争になるのは明白です。

 そんな賭けに出るよりは、キッパリと番いの件を断る方が賢明です」


 確かにデリラの言う通りです。


「そう言う案も出た。

 だが、ミースロッド公爵家が強硬に出てきたのだ。

 穏やかに番いを妻に迎えられないのなら、ミースロッド公爵家の存亡を賭けて帝国に攻め込んででも、番いを探し出して妻に迎えるとな」


 やはり番は呪いです。

 獣人を狂気に走らせてしまいます。

 もし番い相手が正妃殿下であったとしても、ドルイガ殿は諦めないでしょう。

 帝王陛下はその覚悟をしているのでしょうか?

 それともその場合は、ドルイガ殿とシュウガ公を騙し討ちするのでしょうか?

 そこまで考えておられないでしょうか?

 いえ、父上もその場にいたのですから、身命を賭して諫言したはずです。


「では何故自由に探させなかったのですか?

 シュウガ公は帝国と皇国の戦争を望んでいなかったのでしょう?

 番いが独身であろうと既婚であろうと、それ相応の結納金や賠償金を払えば内々ですむ事です。

 それが例えどれほど莫大な金額であろうと、穏当に番いを妻に迎える事ができるのなら、シュウガ公もドルイガ殿も支払ったはずです」


 デリラの言う通りです。

 賢明な重臣は帝王陛下にそう諫言したはずです。

 誰も諫言しないのなら、父が命懸けで諫言したはずです。

 なのにどうしてこのような事態に至ってしまったのでしょう?

 

「少数の重臣はそう諫言した。

 俺も一緒に帝王陛下を御諫めした。 

 だが、起死回生の一手を願う獣人貴族や、帝位を狙う王子達が、この好機に大陸を平定しましょうと、帝王陛下を唆したのだ。

 王太子殿下と有能な重臣が大魔境に遠征しているのが痛かった。

 殿下が宮廷におられれば、このような事態にはならなかったのだ。

 せめて有能な重臣がもう少し残っていたら、陛下に思いとどまって頂けたかもしれない」


 何と間の悪い事が重なったのでしょうか!

 クリスチャンとブリーレの出会いからずっと、悪い事が重なっているようです。

 悪魔か何かに呪われているのかもしれません。

 ブリーレが執念深く呪いをかけているのかもしれません。

 あのブリーレの事です、死ぬときに強力な恨みを残したはずです。

 呪詛払いをした方がいいのかもしれません。


「では父上。

 番いをどうやって探すのですか?

 ドルイガ殿に自由に探させるのですか?

 それとも帝国が協力するのですか?」

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