第22話
「番い探しは皇国を滅ぼした後だ。
帝王陛下も愚かな方ではない。
今番いを探し当てたら、ミースロッド公爵家が掌を返す事は分かっている。
全ては番いの呪いなのだ。
番いを見つける事ができれば、攫ってミースロッド公爵領に逃げ込めば済む事だ」
父の言う通りです。
番いさえ見つけてしまえば、後は何とでも出来ます。
人虎種の中でも飛び抜けて戦闘力が強いのが、ミースロッド公爵家です。
その赤い毛並みは、返り血を浴びて変色したと言う伝説があるほどです。
ですがそのミースロッド公爵家が、帝国の言いなりになっているとは思えません。
必ず勝手に番いを探すはずです。
それをどうやって防ぐのでしょうか?
「二人が疑問に思っている事は、俺も同じように思ったし、帝王陛下にもお話した。
だが聞き届けて頂けなかった。
今の宮廷勢力は、皇国遠征派が圧倒的に多いのだ。
一日も早く王太子殿下に戻って来て頂けねばならん」
確かに父の言う通りです。
殿下と王太子親衛騎士団が戻ってきたら、他の王子達や獣人貴族は恐怖で口をつぐむでしょう。
いえ、もしかしたら違うかもしれません。
彼らはミースロッド公爵家の戦闘力に期待しているのかもしれません。
ミースロッド公爵家なら、殿下にも勝てると思い上がっているのかもしれません。
もしそうだとしたら、とても危険な事です。
「父上、殿下にはもう伝令を送られたのですか?」
「殿下が残していかれた重臣が送っている。
俺も独自に伝令を送っている。
邪魔する者はいるだろうが、あいつらならどんな手段を使ってでも殿下に伝言を届けてくれるだろう」
私の疑問に対して、父が配下を心から信頼している自信に満ちた表情で答えてくれました。
ひとまず安心はできましたが、新たな可能性も伝えてもらわなければなりません。
いちいち父に説明してからまた伝言を頼むよりも、こういう伝言をお願いしますと言いながら、父に話を聞いてもらった方がいいでしょう。
「私も伝言を届けて欲しいのです」
「どんな伝言を届けろと言うのだ?」
「もしかしたら、ミースロッド公爵は自らが大陸の覇者になろうとしているのかもしれません。
これまでは敵対していた、帝国の獣人貴族が頼って来たのです。
有力な獣人貴族がブリーレ謀叛事件で滅んだと言うのは、戦力的には痛手ではありますが、獣人の王となろうと考えるのなら、絶好の好機です。
獣人種を全て統合できるのなら、帝国と皇国を相争わせて人種に力を削げば、獣人種が大陸を征服するのも不可能でははありません!」
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