第4話 ドラキュラさんは虚構に合い過ぎる

「いらっしゃいませ..」

「大人二枚で。」「はい」

やれやれ、ここの所疲れたな。

力を行使し過ぎた、いやしざるを得なかったというべきか。


「あの狐、今に見ていろ..」

しかししっかり室内でデメリット回避が痛い。怒るに怒れない環境を設けおって、好かれたいのか?

「..まぁ良しとしよう。」

今回は中々いい条件だぞ、映画の受付

物語の番人。私に興味を持つものはおらず、見たい映画のチケットを売る人程度の認識しかせん!

「存在としての価値観は無く、目立たない推奨派にとっては楽園なり。」


ただし例外も無くはない。

「大人カップル二人で」

「カップル席ですね、わかりました」

ことカップル共には問題無い。男女二人で見る映画などイケメン壁ドン映画かハートフルな犬映画だ、もしくは役者が棒読みで声を入れたスカしたアニメ映画。そんなものに干渉などせん、なら何が危ないか。

「すいません、プフッ!」来た。

「何をご覧に?」


「えーっとね..はっ!

ドラキュラVSデスゾンビ」そうだ。

なっ?

こういう事だ、こうした振り切った内容に逆に引っかかるのだ。

「本当に見るのかこれ..」

なんだデスゾンビって、ドラキュラはいいけど。多分かなりつまらんぞ!

「主演誰だ?」

坂島..礼夏...聞いたことないな

どうせ大したことない女優だろう。

見る客も大した事無いしな。

「ごゆっくりどうぞ。」

地の果てまで心を乾かせ..!

「ふぅっ。」「ん?」

今度は何だ、黒縁メガネにハンチング何やら雰囲気のある男が来たぞ。


「今月オススメなんですかね?」

「オススメですか、えっ〜と...。」

「いや、大丈夫です。

こういうのって、自分で吟味して決めるものですもんね。すみません」

物腰の柔らかな男だ。

何か普通とは違う感覚がありそうだな

「実は僕、映画監督をやっていましてね。遠征じゃないですけど、他の人の撮ってる映画見て創造性を高める名目で月に何本か見に来るんです。」

「...ほう。」

現役の映画監督が、見る映画か。

興味深いな、一体何を見る?

「そうだな。

この中だと..これ、だな。」

「お決まりでしょうか?」さぁなんだ


「じゃあドラキュラVSデスゾンビを」

それかよ!

プロが選ぶなそんなもん‼︎

「よっしそれじゃあ行きますかぁ!」

臨戦態勢かしかも

「ごゆっくりどうぞ。」

「あとで感想言いますね..?」

地獄の耳打ち!

言うな絶対知りたくないから。

「なんだというのだ..」

地味で極楽な仕事だと思っていたが、まぁまぁ気疲れするではないか。

「話と違うぞ」

何の話かは知らんが。


「もー結局〜?」

続けざまに来客か、休む暇も無いな。

「ていうかまた女三人で映画来てる」

「仕方ないじゃん良いオトコいないんだからー。」

「見る目の無い男が多いのね」

なんだコイツら、三者三様で無個性だな。同じ工場出身か?

「ま、たまには作り物で泣くのもね」

「たまにっていつもじゃーん!」

「いいものだよ?

変な男と一緒にいるより、虚構の恋の方が燃えるじゃない?」

何を言ってんだこの女共、特に三人目

良い女代表みたいな素振り見せて、どうせ見るのはやり尽くされたパターンを繰り返すドベタ映画だろ?

「なににするー?」「これいいね。」

「いいね、これにしよっ!」

見せてみろ、お前らの女子力とやらを


「ドラキュラVSデスゾンビを三つ!」

お前らもか!?何故こぞってそれだ?そんなに良いのかそれ。

ちょっと見たくなってきたわ!

「客層を問わずの集客か..」

デスゾンビってなんだ?

ゾンビの時点でまぁまぁデスだが、ドラキュラはいいとして。

「映画館で一体して見るのかこれを」

人数で面白い感じにしてるんじゃないのか、ドラキュラはいいとして!


「結局こうだ、やはり狐のヤブ医者め

これを見越して態々ここに..」

「どうですか様子は?」「うおっ!」

コイツ..いきなりかっ!

「横からスッと出てくるな、普通の振る舞いはできないのか貴様」

「できますよ、しかしする義理がありませんからね。近くまで来たので伺いに来ましたよ?」

「....ふん。」

嘘をつけ、茶化して笑い者にしに来たのだろ。その為に己で設けたフィールドの癖に、バーカバーカ!

「せっかくなので何か見て帰りましょうかね..。」

「勝手にしろ!」

「そう怒らないで下さい、何がいいですかねぇ..。」

ロクなモノやってないからな、どうせ流れでいけばコイツも...

「それではこれにしよう。

ヴァンパイア対フランケンタイタン」

なにソレ!?

そんなのやってんの?

ドラキュラとゾンビの類似作品

監督は..別じゃん、嘘っ。

「ヴァンパイアっておかしいですよねフランケンタイタンはわかるけど」

頭おかしいのか、逆だろ普通は。なぜフランケンタイタンが理解できる?

「では、後ほど。」

「後などあるか、勝手に帰れ」

癖のある風味の余韻に浸りつつな。

「私も長い事映画を見てないな..」

帰りに何か見て帰るか。

何を見て帰るか、話題のホラーもあればハートフルなヒューマン映画もあるしな..よし、決めた。

「ドラキュラVSデスゾンビにするか」


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