第36話 勢いで試乗
ヘルメットを引き取った帰り、あまりにも天気が良いので、このまま試乗しに行っちゃうことにしました。
本来なら、短時間とはいえバイクに乗るわけですから、ある程度装備を揃えてからと思いましたが、ヘルメットとグローブは黒地ということもあり、購入するバイクの色に左右されにくいものなので、出来れば購入する(かどうかは分からないけど)バイクの色が決まってから選びたいと思い、だったらこのまま試乗してしまおうと判断しました。
試乗は先週妻と一緒に行った輸入車のお店になりますが、先週お伺いした時、週末は僕のマンションから近いドーム式球場で試乗会をやりますと聞いていて、逆に言うとお店の方は空いているということだったのもあります。
そして僕が欲しいと思っているバイクは、その試乗会には持って行かずお店にあるので、試乗し放題ですよと(笑)。
試乗の書類などを記入した後、クルマからヘルメットとグローブを持ってきて、流石に半袖では怖くて乗れないので、Gジャンを持ってきておきました。
準備をしている間に、試乗車の暖機運転を終えたようで、ガレージに移動するとすぐに出発できる状態になっていました。
このお店、一応試乗コースがあるのですが、そのコースはかなりの山道、というか山の途中まで登って、ぐるっと回って降りてくる周回路になってました。
お店には、僕はまだ大型二輪免許を取って1週間程しか経過していないこと、また公道でバイクに乗るのは30年ぶりということを伝えてあったので、最初の1周は店長さんの大型バイクに先導してもらい、1周したところであとは何周でも好きなだけ乗ってきてくださいと(汗)。
先週跨っただけのバイクに再び跨って、今回はエンジンを自分で掛けます。すぐにエンジンが掛かると、流石に1000ccのバイクだけあって、教習所のバイクよりだいぶ勇ましい音が響きます。心の中では
『本当に、イキナリ教習所で乗ってたバイクより排気量の大きなバイクに乗れるのかな?』
などと考えていたのですが、あっけなく店長が出発したので心の準備が出来ないまま、お店の前の国道に出てしまいました(笑)。
いざ走り出してしまえば何てことは無く、むしろ教習所のバイクよりマイルドで乗りやすいかも?などと思いましたが、これはあまりにもバイクの精度が良いのと、コンピューターでそのような味付けされているだということを、この時はまだ知る由もありません。
店長のバイクがウインカーを出して、いよいよ山の方に入っていきます。最初は住宅街を通るため、法定速度をきっちり守り優先道路でも速度を落とし安全確認、初心者を引き連れての試乗ですから、間違っても事故などを起こさないように、流石に気づかいです・・・と思ったら、住宅街を通り過ぎたあたりで、店長の本領発揮(汗)。
それについていこうと無意識にアクセルを空けると、流石にリッターマシンと呼ばれる1000ccのバイクだけあって、蹴りだされるように加速していきます。
この段階で、正直怖いとヘルメットの中で呟いていましたが、あれ?なんか普通に乗れるな?という感覚に。
僕のあたまの中にある、細切れで繋がりのなくなった記憶細胞が、急速にシナプスで繋がれていくような感覚と同時に、このバイク凄い!というバイクの優秀さが一気に津波のように襲ってきました。その後店長と別れてから同じコースを2周して無事お店に帰ってくることが出来ました。
僕の予想としては、ド素人のおっさんが試乗車とは言え、とても高価なバイクに乗って行ったんですから、ちゃんと無事に帰ってくるか心配でガレージ前で待ってると思ったのですが、店長も営業さんも店内に居ました(笑)。
エンジンを止め、ヘルメットやグローブを脱ぎながら店内に戻ると
『おかえなさい!楽しめましたか?』
えぇ。後半は怖さより正直楽しさの方が勝っていたので
『楽しかったです、やっぱりいいバイクですね』
『そうでしょう?』
『はい、それより最初店長が早すぎて怖かったですけど(笑)』
『大丈夫です、ちゃんとミラーでお客さんの状態見みて、大丈夫と判断したので少しスピードを上げたんですよ(笑)』
『すこし・・・ですか(汗)』
『はい、少しですけど、楽しかったでしょ?(笑)』
そんなわけで、初の大型バイクの試乗は、無事体験することが出来ました。
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