ミチザネとカボチャ
あなたはユリウスの息子ですね? と朝顔はスライムの少年に話しかけた。
「はい。ユリウスの息子、アウグス・スラ・ゴドリノです」
「あなたのことは ' 旅する小人たち ' から聞きました。『森の向こうの小屋』へ行きましょう」
「はい。よろしくお願いします!」
アウグスははきはきと返事をした。
日が暮れてあたりは闇となる。
アウグスを乗せたネコトラと朝顔が乗ったネコバイは、『森の向こうの小屋』へと走った。その後をたくさんの"カボチャ頭"の頭がついていく。闇の中、灰色の森で彼らだけに色がついていた。
その様子を誰かが見たとしたら気味が悪くも見えただろうし、もしかしたら幻想的な美しい光景にも見えたかもしれない。
『森の向こうの小屋』の前までたどり着くと、そこには数人の小人がいた。
アウグスがネコトラから飛び降りると、小人が話しかけた。
「やあやあ、スライムの少年君。こんばんは」
「あ、小人さん、こんばんは」
「この辺りは様々な時が交差する地点、気をつけるんだよ」
小人が言うように、この『森の向こうの小屋』がある場所は異なる時間軸・空間軸が
「あの子はスライムの王か?」
「いや、スライムに王はいない」
「スライムに王はいない。しかしスライムの王はいる」
小人たちはスライムについて議論し合っていた。
朝顔は"カボチャ頭"の頭を見てどうしたものかと思案した。
「"カボチャ頭"の頭の皆さんは、『森の向こうの小屋』に入りきれないですね......」
"カボチャ頭"の頭とは、カボチャの中身をくり抜き目と鼻と口の穴を開けた姿をした者だ。何に蝋燭が一本立っており、目と鼻と口の穴からオレンジ色の光が漏れている。
本来は、その下に人間の体がついていたのだが、頭の部分だけになっている。そのため朝顔は"カボチャ頭"の頭とややこしい言い方をしているが、ようするに姿形は人間の顔を模したカボチャである。
オレンジ色に辺りを照らすカボチャの顔が無数にプカリプカリと空中に浮かんでいる。
「ミチザネさん、"カボチャ頭"の頭の皆さんには外で待っているように言ってください」
ミチザネがそのようにすると、なぜかその無数のカボチャたちは嬉しそうな顔をして、小屋の周りを浮遊してまわった。
とりわけ小さなカボチャがミチザネにまとわりついて離れなかった。最初は"カボチャ頭"の頭を気味悪がっていたミチザネであったが、なぜか優しい顔をしてその小さなカボチャの頭をなでてあげていた。まるで自分の子をなでるように。
〈人間では無い何か〉ミチザネは彼が人間だった頃のことを思い出していたのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます