カボチャの祝い

 "にゃーーーーーー"と音を立ててやって来たのは、ネコバイに乗った朝顔であった。

 いちおう説明しておくが、ネコバイとはネコでありかつオートバイである。オートバイであるが、より厳密に言えば現代におけるスクーターのような形状をしていた。


 朝顔はヒューマノイドタイプではなく、植物の朝顔の姿をしていたためネコバイに乗ってやってくる姿はやや異様であったかもしれない。

 はて、それにしても朝顔といえば確かオートバイを探していたはずなのだが......ネコバイに乗っているのはどういうわけなのだろうか?


 ネコトラはネコバイを見ると"にゃおん、にゃおん"と言い、ネコバイは"にゃおおん!"と返事をした。この二体は夫婦なのであった。そして生まれたのが運転席にいた子猫というわけだ。


「ネコトラさん、世界がとつぜん灰色になったかと思ったら、この辺りから緑色の光や青白い光が見えたので来てみました」


 植物型の姿をしているときは、朝顔の口調は丁寧である。ネコトラは"にゃおん"と答える。

 朝顔が首から下げている赤い宝石から、まあ、植物型の朝顔に首という言い方が正しいのか分からないが、その赤い宝石から ' 人間では無い何か ' がシューっと出てきて言った。


「アサガオ、頭蓋骨が山になっているのじゃ」

「まあ、ミチザネさん、とつぜん出てきて......そうですね。頭蓋骨が山になっています。あれは何でしょうね?」


 すべての頭蓋骨がカタカタと音を立てて、朝顔達の方に顔を向けた。すると頭蓋骨の一つ一つが"カボチャ頭"の頭になり空中に浮かび、中の蝋燭に火が灯った。

 そして朝顔の方へと押し寄せてきた。いや正確には朝顔がミチザネと呼ぶ ' 人間では無い何か ' へ押し寄せてきた。"カボチャ頭"の頭はミチザネを取り囲むと一斉にいわいの言葉を発した。


「ラーーーラーーーラーーー」

「まあ、"カボチャ頭"がィィィィでなくラーーーと言っています。どうしたのでしょう? しかし、ミチザネさん、"カボチャ頭"に好かれているようですね」


 確かにミチザネを取り囲む"カボチャ頭"の顔は心なしかニッコリとしているようにも見えた。


「わ、ワシはこやつらに好かれておるのか?」

「そのように見えますが......」


 ミチザネは気味悪そうに逃げ回ったが、"カボチャ頭"の頭はミチザネを追いかけるようについて回っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る