あの方がそう言ったので
「あの方がそう言うのか、じゃあ仕方ないな」妖女にもいろいろ過去があるのだろうと思い、〈幼女〉朝顔はそれ以上深くは聞かなかった。意外とデリカシーがあるのである。
それはそうと"焦げ臭い"匂いであるが、彼女の家のキッチンの方から漂ってきている。誰かが料理をしているようだ。
「きゃ~、焦げてる、焦げてる~」という声が聞こえてきた。妖女は「まあ大変」と言って、キッチンへ向かった。
キッチンで料理していたのは紅スライムであった。器用に2本の手を伸ばして、人参や玉ねぎなどの野菜を切ったり肉を柔らかくするために叩いたりして、大きめの鍋にそれらを入れ、それから大量のチーズを入れ何かスープ状のものを作っていたようである。
ただ、いかんせんスライムであるため調理台まで背丈が足りていないのである。そのため彼女はだいたいの"勘"で野菜を切ったり、スープを煮込んでいたりしているのである。
紅スライムは、余った肉をフライパンで焼いていたのだが、それが丸焦げになっていた。妖女は「まあ大変」ともう一度言って、とりあえずコンロの火を止めた。
「ああ、妖女さま、わたしったら焦がしてしまいました。ごめんなさい。」と紅スライムは謝った。
「いいのよ別に、失敗は誰にでもあるもの」と妖女は言った。
〈紫スライム〉サツマイモは、紅スライムを見ると頬を"紫色"に染めたのである。つまり一目ぼれであった。通常、人間であれば頬は赤く染めるものだが、人間の姿となった今でも紫スライムとしても特性は変わらないようである。
「あ、あなたはもしやユリウス様では?」と紅スライムは言った。サツマイモの本名はユリウス・スラ・ゴドリノである。
「お、俺のことを知っているのか?」
「もちろんでございます。' スライム界 ' にいたものでユリウス様を知らぬ者はいないでしょう。」
「ユリウス様がお客様としていらっしゃったなら、もう一度作り直しますわ」紅スライムは、そう言って料理を再開した。
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