ドゴリコ王国の伝承〈ダトゥル・ドゥ・ジョサ〉(2) 〈Di e ta〉

 さて、そのストーンサークルの数百メートル離れた場所には、ぽつんと洋館が立っている。もちろんこの時代に西洋も東洋もないので、我々の時代の概念でいうところの西洋風の建物という意味である。これが妖女の家である。


 二階建てで真っ白な壁、オレンジ色の屋根には風見鶏が立っていた。


 その洋館の庭には、バラのような棘のある低木が植えられていて、かつてはきちんと手入れされていたのかもしれないが、今では枝もほうぼうへと伸び放題な状態になっていた。


 〈ダトゥル・ドゥ・ジョサ〉が草原に表出されるとすぐに、そのバラのような棘のある低木は一斉に花を咲かせた。まさに真紅のバラのような花であった。


 そのバラのような花が、一輪一輪からほのかに赤い光子を放っている。そのため、庭はほんのり赤く照らされた。


 花達は〈ダトゥル・ドゥ・ジョサ〉を見るとどうするか互いに議論をした。彼女達の美意識的には〈ダトゥル・ドゥ・ジョサ〉は美しくないと感じたため、議論の結論としては、この草原から排除しようということになった。


 攻撃のためにはいちおう許可が必要なため、彼女達は自分達の上位者にコネクトする。


" i oka to eli tha? / D.Flowers "


" pls do it ys / Nk-K.U.N-JN "


 ' Nk-K.U.N-JN ' なる者から許可らしきものが出たのち直ちに、彼女達は真紅のフォトンを放出した。


 暗闇の中その赤い光は、草原の洋館から〈ダトゥル・ドゥ・ジョサ〉の中心部へと真っ直ぐな線をつくった。草原がほのかに赤く照らされる。草達は怯えているかのように見えた。それは一瞬の出来事であった。


 〈ダトゥル・ドゥ・ジョサ〉の真紅のフォトンが照射された部分からコポリと汚らしい液体がこぼれ落ちた、それは〈Di e ta〉である。それも一瞬の出来事であった。


 その一瞬の出来事の後、草原は元のように晴れ渡った。〈ダトゥル・ドゥ・ジョサ〉は退散したのか......


 そして何事もなかったかのように、また草原にさわさわとした優しい風が再び吹き始めたのである。

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