西暦2119年のナダ家(3)

 「わしは180歳ということになる」と ' ネコ仙人 ' はもう一度胸をはって言った。人間の子供相手なら180歳とも言えば驚くと思ったのであろう。


 しかし、「へぇー。結構長生きなんだね」とタカキ、ヤスユキの兄弟は言い、驚く様子もない。


 180歳といえばもちろん長寿であるが、この兄弟がいるこの時代においては生命科学やロボット工学の進歩により、それくらいの年齢まで生きることはそれほど珍しくはなかったのである。


 ただし、その年齢まで生きるためには体の多くの部位をサイボーグ化する必要があったし、何しろ費用がかかる。そのため、ほとんどの人はそこまでして生きようとは思わないものなのであったが。


 「もしかして、お前達はナダの者か?」と ' ネコ仙人 ' は聞いた。奇妙な聞き方ではあったが、確かにナダという姓であるため、兄弟は「そうだ」と答えた。



 そんなことよりこの2人の兄弟は、〔タイムマシーン〕に〔スピリット・ウォッチャー〕、それに奇妙な仙人......これはこれから何か冒険が始まるのではないかと、ワクワク・ドキドキと胸を躍らせていたのであった。


 それにしても、この2人の父親はおそらく〔タイムマシーン〕を使って過去に行き、戻ってきたときになぜかこの大猫丸を連れてきてしまったようだが、そのことに気がつかなかったのだろうか......


 しかし、少年達のワクワク・ドキドキはもう止めようもなかった。2人は目を見合わせると〔タイムマシーン〕を使ってみようとお互いに言葉を交わすことなく意思を疎通しあったのである。


 兄のタカキは「ところで、大猫丸さんは何時代から来たの?」と聞いた。


「何時代とはどういう意味かの? 先ほどから申しておる通り、藤原忠平様が蔵人の少将であったころ......」


「おい、ヤスユキ、藤原忠平って知ってるか?」と聞いた。


「知らないよ。でも、藤原ってことは平安時代なんじゃないかな?」とヤスユキは答えた。


 弟ヤスユキが平安時代と言うので、タカキは〔タイムマシーン〕に平安時代っぽい年代を適当にインプットしてみたのである。


 〔タイムマシーン〕はキィーンという音を立て、時間跳躍をした。


 大猫丸こと ' ネコ ' はいきなりの時間跳躍に驚いたのか「はうあっ」と声を上げた。

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