第12話 最低
「どこから見てたんですか?」
恐る恐るそう質問する。
「あなたが、なにか、ブツブツ呟いて真っ赤になっていたところからだけど」
どうやら、僕の告白台詞は聞かれていないようで、ほっと胸を撫で下ろす。
「ところで、自分の名前を告白の台詞に含めるのはどうかと思う」
聞かれていた。顔がさらに熱くなった。
「・・・・・・忘れてください」
「別にいいけど」
どうでも良さそうに、肩にかかる髪を指で弄る。
「それで、話って?」
「そのことなんですが」
そう言うと、僕は尾張さんに目配せする。
それまで、黙っていた尾張さんは意を決したように、
「その、本当にごめんなさい。悪気は本当に無かったの。あなたを傷つけてしまったこと、とても、後悔してるわ」
謝罪の言葉とともに頭を下げる。
それに対して、椎堂さんは僕の方を値踏みでもするように見つめながら無言を貫いている。
「あの、椎堂さん?」
その間に耐えきれなかった僕は、椎堂さんの反応を伺う。
「なに?」
「いえ、せめて、何か反応をしていただきたいのですが」
「?」
椎堂さんは不可解といった表情を浮かべる。その反応は、今起こったことがまるで無かったかのようで。
その表情を見上げる尾張さんは、
「そうよね、私なんて見たくもないわよね・・・・・・」
と、泣きそうな顔をしながら呟く。
「あの、流石に無視は酷いんじゃないですか?」
流石に、見ていられなくなった僕は、椎堂さんに対して、詰問するような態度になってしまった。
「訳のわからないことを言わないでくれない? それで、尾張さんの話ってなんのことなの?」
「はあ?」
その発言を、聞いた尾張さんは、下を向いて唇を引き結ぶ。
「いや、聞いてましたよね? 尾張さんがあなたに謝罪したの! その発言は流石に看過できないですよ! 最低です!」
ただ、腹が立った。それ故の発言だった。
しかし、それを聞いた椎堂さんは困惑したような表情になる。
「あなた、何言ってるのよ? 尾張さんって、尾張恋さんよね? 尾張さんは先月ーーーーーーーーーー」
椎堂さんはその言葉を告げるーーーーーーーーーー亡くなったじゃない。
それを聞いた尾張さんの表情は僕からは見えなかった。
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