第2話 眼
音を見下ろす。
ただそこに転がっている音。
半覚醒的な眼は私を見ているのだろうか。
時折聞こえる咳払いのようなゴボッとした音をたてながらソレはそこにある。
私が・・・?
私、今一人なのだろうかと辺りを見回してみても良く見えない。
耳を澄ましてみると、今とは違う場所からも似たようなゴボッとした音と共にガサガサと言う音もする。
『ったく、手伝えよな~』と聞き覚えのある声がしたと同時に私の世界に色が付く。聞き慣れたこの声はなぜだかいつも私に色をくれるのだ。
整理してみると不透明ではあるが、右手に握るこの物と晴々しいほどの爽快感を検証してみるとどうやら私がやったとみて間違いはなさそうだ。
よかった。
私がやったのだ。
この安堵感いつ以来だろう。
フと記憶を辿ってみる。これは苦手な作業だ。
ほらやっぱり思い出せないじゃない?(当然だ。
自嘲気味に笑いながら噛み締める。
この胸の高鳴りと嫌悪感と脱力感。
やっと手に入れたんだ。
私は欲しかったがどんなに強く望んでも手に入るはずが無いと蓋をした感情を強引に手繰り寄せた。
私はやったんだ。
もう1度強く噛み締めながら発した自分の声の大きさに驚く。
そうだ。私は意外と小心者なのだ。
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