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「結構面白かったな」


わたしが希望した作品だったので、そう言われてとりあえず肩を撫で下ろす。すごく深いというわけでもないところに見やすさがあったと思う。エレベーター待ちをしている人達を見て、わたし達は1階ずつエスカレーターで降りていく事にした。途中、2フロア程、スニーカーを見たり洋服を見たりで降り立って見て回り、最終的にはお茶をしようと、地下の広いカフェを目指す。


店名の通り、内装も照明も格好良い感じで、何より見た感じこんなにも大バコのお店なのにお客さんの多さが際立っている。運良く待つことは無く案内をされ、なかなかのBGMのボリュームの中、席に着く。


カフェタイムのフードメニューはそれほど多いわけではないので何を頼もうかと迷う。


「ね、パニーニ、半分こしない?」


フレンチフライ付きのようで、ボリュームが心配だったため、そう提案してみる。下井くんは「好きにして」という感じだったので、半分に切っておいて貰えるように店員さんにお願いをして、あとはお互いにドリンクを頼んだ。


なんか、ひとつのプレートに乗っているものを二人で分け合うなんて、兄妹か、恋人か……という所のような気がして、お皿は下井くんの手で、中心というよりはわたし寄りにずらされているのだけれど、同じ所から手に取るのを少し照れてしまい、ポテトは二つまみ程度で口にするのをやめて、ほぼほぼ下井くんに食べてもらった。


「うわぁ……」


メニュー表ではとっても気になっていたパフェを運ぶ店員さんがすぐ横を颯爽と通って行き、思わず羨望の眼差しで見送っていた。


「よだれ出てるよ」


「えっ……」


とても焦って真顔でペーパーナプキンを口元に持っていく。


「冗談だよ」


鼻で笑うようにそう言って、ストローでグラスの氷をかき混ぜている。


「もぉ、そういうの本当にキツい。油断して本当に出てるかと思ったじゃん」


下井くんは笑いながら「頼めば」と言ってくれたけれど、お会計持ちはわたしではないだろうし、さすがに少し躊躇した。


“食べたさ度” が相当高かったのか、迷いは見せるものの、本音は隠せなかったようで、下井くんが店員さんに声を掛けてオーダーへと導いてくれた。


テーブルに届けられた木苺のパフェは見た目もお味も完成度が高く、顔がほころぶばかりだった。


「次は下井くんも一緒に食べようね」


聞いてみると甘いものは好きらしく、甘党ではない裕泰くんとは叶えられなかった、スイーツ行脚が下井くんとなら出来るのかな……とか、勝手な妄想が広がっていく。



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