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20150622(月)
『最近加世子に会った?』
二人が会っていないのを加世子から聞いて知ってはいたが、加世子達を見送った後、時間をおいて有陽は下井にメールを入れる。
『会ってないけど』
『なんで?』
加世子には了承を得ていないし、何より二人の関係性がどんなものなのかはっきりとわからなかった事もあって迷ったものの、何かしなければと有陽は思い立っていた。
『なんか 大変そうで…』
理由は書かずに、これだけを送る。
余計なお世話だったかな……
こんなことをすると、二人の仲を深める手助けをしているみたいになるし放っておけば良いのだろうけど、そんな気持ちとは裏腹に、やっぱり加世子は大切な友達で、精神的に参っているような時は何かしてあげたい、そう思って行動に起こしている自分って何なんだろう、本心を隠して、ただ頼りにされたり良い人だと思われたいだけの偽善者なのかな、と有陽は自己嫌悪感さえ抱いてしまう。
リビングからの明かりが漏れる庭でサモサと少し戯れた後、加世子は家に上がり、明日の授業の準備をする前に、母純香の姿がある場所で過ごす。無意識の内に癒しを求めていた。
入浴後はすぐ部屋へ上がると、帰って来てからいつもより言葉数が少なかったからか、ママがわたしの様子を気にしてハーブティーを運んで来てくれた。
「加世子、何かあった?」
パパがいる前では聞けなかったのだと思う。そんなママの気配りを有り難く感じながら、裕泰くんと又会って、率直な思いを告げてきた事を伝える。
「それを飲んでゆっくり休めたら良いな」
それだけを言って部屋から出て行く。ハーブティーの落ち着いた香りと、ママの優しさと笑顔のお陰で、わたしが裕泰くんに対して言った事や心苦しくも感じるわたしが生み出した現状を、肯定しても良いのだと思える気持ちが芽生えていく感覚になれた。
『別れ際、素っ気なくてごめんね』
『また気持ち伝えたよ』
有陽ちゃんにメールを入れる。
“お疲れさま“ でもないだろうし、返事に困ったのと、内容からしてまだ下井から連絡が無いんだな、というのがわかるのもあって、有陽は無難な返事で済ませた。
『大丈夫だったのかな』
『また会った時に……』
『大丈夫。ありがとう』
久々にハートマークを付けて返信をした直後、有陽ちゃんからの『おやすみ』を確認する前に別のメッセージが届いた。下井くんからだった。
『今何してる? 電話しても良い?』
驚いて思わずティーカップをお皿に乗せる音が大きくなる。リラックスしてきたところだったけれど、急に鼓動が速まるのが全身でわかる。胸に手を置き、 ふーっ と大きく息をして心を落ち着かせ、明日の用意をしているだけだと知らせると、早速着信が入った。
「久し振り……だな」
最後に……というか、最初にふたりで新宿でランチをしてから2回目が無い状態のまま2週間が過ぎている。
「うん……」
電話越しでも声が聞けて嬉しいし、何故だか安心する。
「どうなってる……今」
裕泰くんとの事を聞いているのはわかったので、今日もさっき会ってきたばかりで、気持ちはもう何回か伝えていると話した。
「なんかごめんな……」
「えっ?」
「もしかして寺田さんにばっかり押し付けてる?」
…………?
意味がよくわからないでいると、
「もう二人だけで会う必要ないから。俺が間に入る」
「良いよね?」
「…………えっ?」まだ理解できずにいたけれど、力強い口調に飲み込まれるように、言葉にしないままスマホを耳に当てて、伝わりもしないのにただ ‘うんうん‘ と頷いていた。
結果的には週末に会う約束をして、この日は電話を切る。
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