第1話*本当に転生しちゃったよ

「―――、――う様――魔王様!!」

「うえっ!?」


 どうも、社畜歴34年目山中雅史男です。


 記憶が正しければ俺は車かなんかに轢かれて死んだはずなんだが。

 どうして高級そうな城の目の前で倒れているんですかね?

 普通中じゃねえの!?


「魔王様、おはようございます!」


 そして目の前で俺のことを魔王と呼ぶ女性――ケモ耳のようなものがはえている――が目に涙を溜めている。


「……ちょ、ちょっと待ってて」

「? はい!」


 うん。

 いや、確かに願ったよ。

 ラノベのように異世界に…ってな!


「ふ、はははは!!!」


 まさか本当に転生するなんて!

 願ってもないことが叶ってしまった。

 …いや、願ったな。


 格好も変わってるみたいだな。

 いかにも魔王って感じの黒で統一された服、頭にはえている角、背中にあるドラゴンのような羽。


「……ステータス、オープン」


 ゲームじゃあるまいし、出るわけないだろうと思い言ってみたが。

 それを見て息を飲む。



〔ステータス〕

 名前―ヤマナカ マサシ―

 性別―男―

 職業―魔王―

 種族―×××××―

 HP―9999999999―

 MP―9999999999―

 身長・体重―175㎝、69㎏―

 属性―×××××―

〔スキル〕

 ・自動回復・無尽魔力・魔法創造・使役・威圧・覇気・攻撃力&防御力up・光属性耐性強・物理耐性・魔法耐性・照準・消去・感知・言語理解・急成長・鑑定・

〔称号〕

 ・魔王・転生者・社畜・



 目の前に現れた光の薄い板のような物に並ぶ文字。

 種族と属性が伏字になってるのはなんでだ…?


 てかなんで称号に社畜が入ってんの。


 ステータスを閉じ、さっきの女性がいた場所へ戻る。


「ま、魔王様」

「ちょっと待って。いろいろ聞きたいことがあるんだけど…」

「はい!なんでも仰ってください」


 この人、目をキラキラさせてこっちにすり寄ってくる。


 てか、む、胸が…当たってるんですけど。

 無意識なの?怖っ。


「なんで俺のこと魔王って呼ぶの?この世界何?あとあの城も…あ、そもそも君は?なんで俺の傍にいるの?」


 疑問を並べるだけ並べ、女性に投げかける。


 流石に一気に聞きすぎたか、彼女は目を丸くして、ワタワタし始めた。


「えと、なんかごめん」

「いえ!…まず、魔王様は異世界から転生してきた…ということでよろしいですかね」

「そうだけどなんでそれを…?」

「代々魔王様は異世界人と決まっているのです!!」


 なるほど。てことは俺の前にも魔王がいたのか。

 そいつに聞けばいろいろ分かるかもな。


「そして、ここは魔王様の元の世界と反対に位置する、"コントラ"という世界です。この世界では、見ての通りたくさんの種族があり、魔法があります」


 流石ファンタジー…にしても元の世界と反対に位置する、か。

 どうやら帰るってのは無理そうだな。

 そもそも死んでるし。


「お城は、代々魔王様がお使いになられているものです。なので魔王様にはあちらのお城に住んでいただきます」

「なるほど。リフォームは可能だな?」

「えっ」


 ま、まさかリフォームダメなのか!?

 これから一生過ごす場所くらい自分好みにさせてくれよ。


「え、と。可能ですが、今までそんなことを仰られたことはなかったので…」


 もしかしてそういう繋がり大切にしてきたのか…。

 魔王のくせに細かいというかめんどくさいというか。


「そこは俺の好きなようにさせてもらうわ」

「わ、分かりました…」


 スキル"魔法創造"でそれっぽいの作ればいいだろ。

 正直自力でリフォームとかしんどい。

 魔法使えば自力ってことになるよな、うん。


「で?」

「…はい?」

「え、君のことは?」


 質問に含めてたはず…。

 まあ人間誰しも忘れることくらいあるよな!

 …人間じゃなそうだけど。


「あ、私は"ソノ"と申します!魔王様の従者として、これから一緒に過ごさせていただきます!」

「従者…?」

「はい、なんでも仰ってください!食事、お禊、外出のお供、城の管理や人間への襲撃など!…魔王様が望めば、夜の営みまで」

「ななななに言ってくれちゃってんの!?」


 この人大人しそうに見えてヤバいのかも知れない。

 よ、よよよ夜の営みって!


 俺の反応を見て楽しんでいるのか、クスクスと笑うソノさん。

 …いや、こっちは純粋な社畜だぞ!?

 やめろよそうやって揶揄うの!


「ではまず、魔王様はお城に入っていただいて…」

「よし分かった。リフォームだな」

「そうです………じゃなくて、この世界について――って足速すぎます!?」


 ソノさんがノリツッコミをかましてる間に城の中に突撃したった。

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