第2話*魔王城が消滅しちゃったよ

 魔王城は正直言って最悪だった。

 何がと言われれば、とにかくイタイ。

 どんな厨二野郎が設計したんだよって感じでイタイ。


「はっ、見てらんねーな!」


 とりあえずカッコつけて魔法創造でリフォーム用の魔法を作る。

 もう二度と使うことはないだろうが、今だけでも役に立ってくれ。


「なんだよこのオブジェ…?"消去"で消せるな、よし」


 じゃあ手始めに全部消しますか!

 城ごといったら怒られるかな…。


 ………うん。


「まあいいだろ!」


 という訳で城消しました。

 結果から言うとね、


「魔王様、何してるんですか!!中にまだ魔物達が残ってたでしょう!?」

「し、城しか消してないから」

「そういう問題ではありません!」


 めちゃくそ怒られた。

 ナンデ。


「リフォームするって言っただろ!てか魔王より先に城入ってんじゃねー!」

「なっ…!そんな理不尽な話がありますか!」

「うるせー!!今からリフォームするから、そんなに嫌なら人里にでも降りるんだな!!」

「そんなことしませんよ!!」


 もちろん俺は抵抗した。


 ……拳じゃない。


 いや流石に女性に暴力はふれないよなー。

 一回上司(女)ぶん殴ったことあるけどな!

 あいつもうゴリラだから。

 女じゃないから。


「というか、どうやって消したんですか」

「あ?スキルだよ」

「そんなスキルありません…本当のこと言ってください」

「はー?お前何………そうか」


 スキルって、俺が持ってるやつ全部知られてるとは限らないのか。

 てかあんだけあれば俺が初めてのスキルくらいあるんじゃ…。


「ソノさん、お前なんのスキル持ってる?」

「魔王様、さん付けは無用です。……そうですね、ステータス見た方が速いと思います」

「ん、おぉ!…ステータスって人にも見せれるのか…」

「本人の意思があればですけどね」


 なるほど。


〔ステータス〕

 名前―ソノ―

 性別―女―

 職業―魔王秘書―

 種族―ウェアウルフ―

 HP―67417―

 MP―37564―

 身長・体重―165㎝、××㎏―

 属性―炎―

〔スキル〕

 ・遠視・短剣術・弓術・炎剣・照準・


 こんなもんなのか?

 多分これでも多い方なんだろう。

 ソノは見たところ優秀。


 それくらい周りの魔物の反応でわかるだろ?


「…ソノ?」

「はい」

「称号ってないのか?」

「称号は魔王様 のように特定の地位に就くか、他の人がしないような体験をするか、ある一つのことを極めた場合に授かります。私はないですね」

「ってことは」


 "魔王"は地位…"転生者"は体験。

 "社畜"は……。


「いや極めてねえから!」

「な、なんですか?」

「あ、すまん。なんでもない」

「とりあえず魔王城を建てていただいても…?」

「ああそうだな」


 てかソノのステータス、体重だけ伏せてあったな…あれも本人の意思なのか?

 体重くらい、気にすることでもねえのにな。


「…ま、魔王様」

「ん?」

「これは……?」


 俺の建てた城を見て驚愕の色を映すソノ。


 そうだろう、感動して声も出んだろう!

 なんてったってこのデカさ、このビジュアル!

 そして極めつけは…


「素晴らしいだろう!?この俺の石像!!」


 城の前にそびえる俺!!

 一回やって見たかったんだよなー。


「………え?」

「どうしたソノ、感動しすぎて腰抜かしたか?」

「ど、どうしてそんなに自信満々なのですか!?これだけはやめましょう」

「なにをぉ!?」


 結局石像は取り壊され、デザイン俺氏の城だけが残った。

 あの石像がなきゃ締まらんな。

 今度作り直しておこう。


 ところでさっきからソノがコメカミをピクピクさせてるんだけど誰か原因知らない?

 そんなことを考えていると、ソノがにこやかな顔でこっちに寄ってきた。


「魔王様」

「なんだ?」

「とりあえずお部屋に参りましょうか」

「え、何する気!?そんな子に育てた覚えはありません!」

「…………」

「ゴメンナサイ」


 ふざけんなとばかりの笑顔に俺は素直について行った。

 ちなみにこの世界について勉強するらしい。


 ちょっと勉強とか無理なんで逃げます。


「魔王様!!!」

「勉強ヤダ!!異世界くらい惰性な生活させろぉ!!!」

「どこの子供ですか!!!」


 子供じゃないです大人ですぅー!!

 捕まってゲンコツを受けたのは言うまでもない。

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