元社畜魔王様は異世界で平和に暮らせない

コッペパンになりたい揚げパン

痛みより願望のが強いって…

「―――ー!!」

「……ん?」


 頭の中に直接聞こえる声。


 あ、仕事しすぎてついに幻聴が…。

 あの野郎、仕事押し付けるだけ押し付けて帰りやがって。

 いつか絶対見返してやる。


 最後の書類の確認を終え、パソコンの電源を切る。


「あー…早く帰ってラノベ読むか」


 ラノベは光って知り合いが言ってたわ。

 まさにその通りだと思う。

 数少ない俺の癒しだ。


 終電もないから近場のホテルで寝ることにした。

 いつもより早く会社出れてよかったなー。


 自分の目の下にあるであろう隈を撫で、スマホをいじる。


 最近気に入ってる電子書籍……あ、あった。

 画面をタップしたのと同時に体が大きく揺れた気がした。



「人が轢かれたぞ!」



 …………え?


「早く救急車呼べ!!」


 滲む視界は血塗れのアスファルトと転がったバキバキのスマホを捉えた。


 ――ああ、俺死ぬんだな――


 叶うことならラノベのように異世界に……

 あっ、チートじゃなくていいから使える能力欲しい

 あと可愛い女の子達に囲まれて死にたい


 いや……死にたくない……


 まだラノベ制覇してない。

 死ねない。

 いや死ぬけど。


 俺は意識を手放した。

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