第23話

 差し伸べられた手を掴んでいいものか戸惑っていると、彼の方から私の手を取って立ち上がらせてくれた。


 「用事があるなら、廊下で待っていた方がいいと思う」


 真剣な表情で私の顔を見て言ってくれたのだった。


 私の顔を貶したり笑ったりせずに話してくれる人と出会えたのはいつ振りだろう。そしてどうしてこんなタイミングで出会ってしまうのだろうか。いや、こういうタイミングでしか尊い人には会えない運命なのだろう。一瞬の間にいろんな想いが頭に過ぎった。


 男子生徒にお礼は言えなかった。千春からの酷い仕打ちと声をかけてくれた彼の優しさがごちゃごちゃになって余裕がなくなった私は、うんうんと首を縦に振る事しかできなかったのだ。


 私は俯いたまま早足で教室を出た。教室から男子生徒を責める千春の怒声が聞こえたが立ち止まらず昇降口に向かって駆けた。


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