第22話

 このまま這って教室から出ようとしたその時、静まり返った教室に声が響いた。


 「お前何やってんの?やめろよ‼」


 その聞いたことのない声のおかげなのか、止まっていた時が急に動き出したかのように教室の中に音とざわめきが戻ってきた。


 「いじめってレベルじゃねーよ、こんなの。お前馬鹿じゃねーの?」


 「だって、こいつの顔キモいじゃん。本当に大っ嫌いなんだから仕方ないじゃん!」


 冷たい床からそっと見上げてみると、千春と見たことのない男子生徒が言い合いを始めていた。


 「そんな理由で暴力を振るうなんて・・・」


 男子生徒の声を遮るように千春は叫ぶ。


 「うっせーな!こんな奴庇うとか意味わかんない。他のクラスの奴がごちゃごちゃ言うんじゃねーよ‼」


 男子生徒にまで強気かと、頬に痛みを感じながら呆れてしまった。この女に怖いものなどないのだろうか。般若のような顔の千春に男子生徒は何も言えず、苦い顔をしている。


 「お前さっさと帰れよ、私と同じ空気吸うな!」


 千春の暴言を受けながら、数度深呼吸をしてからよろよろと立ち上がろうとしたとき、目の前にあの男子生徒が慌てた様子で同じ目線になる位置に来た。そして何も言わず立ち上がろうとする私に手を貸してくれたのだった。


 

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